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一途に愛されて・・・揺れる気持ち

『佳兄は、未央のストーカー』って、アツ。 まさに、その通り。 家で一緒に勉強をしている時や、学校帰り、一緒に歩いてると、どこからともなく姿を現す。 まさに、神出鬼没。 寺田さんに、佳大さんが何の仕事をしているか、恐る恐る聞いてみた。 『青年実業家です。大学一年の時、同期のメンバー数人で、最初の会社を起業されたんです。佳大さんは、医師になるより、商才がありましたから、旦那様も、奥様も認めざるを得なかったのではないでしょうか』 だから父の会社に融資を続ける事が出来たんだとようやく納得することが出来た。 「未央ちゃん、お帰りなさい。荷物が届いていたから、部屋に入れておきましたよ」 「あっ、はい。すみません」 誰だろう⁉ アツは、「未央のお父さんじゃない⁉」って言ってたけど。 部屋に戻ると、紙袋が大量に置いてあった。中を覗くと、服や参考書が、山のように詰まっていた。 「佳兄だね、これ全部。ほら、見てみ。女性用の下着や、服もある」 そのうちの一枚をアツが取り出した。 「ほら、透け透けのキャミソール」 「僕、男だし。興味ない」 ひらひらとされたけど、一応、半分は男の子だもの。そんなのに、なびかないよ。 ふんと、顔を逸らした。その時、参考書の中に『赤』の文字をみたような気がして、一旦、全部出してみた。 「赤ちゃんの素敵な名前?って・・・」 慌てて、袋に戻した。 「未央、佳兄と・・・その、どこまで・・・」 言いにくそうに、アツが。 何の事か分からなくて、きょとんとしてたら、 「最後までした⁉」 って真っ赤な顔で聞かれた。 それで、アツが何をいいたいかようやく理解して、僕まで真っ赤になった。 「キスだけじゃないよね⁉」 今さら、嘘ついても仕方ない。 そう諦めて、小さく頷いた。 「でもね、触られたくらいだから・・・婚約発表まではしないって彼・・・」 「じゃあ、土曜日までにすればいいんだ。未央とエッチ」 「アツ‼」 真面目な顔で、何を言い出すかと思ったら。 まさか、アツの口から、そんな事が飛び出すとは思いもしなくて。 吃驚しすぎて、しばし、唖然となった。 「一緒になるには、既成事実を作るしかないんだよ。俺の事が好きなら・・・未央、分かるよな。言ってること⁉もう、時間がないだ。お願いだから、未央の口から、ちゃんと聞かせて欲しい。友達、幼馴染みーー今までの曖昧なままの関係じゃもうイヤなんだ」 「アツ・・・」 彼の真剣な眼差しに、心が振り子のように、大きく揺らぐ。 ”好き” たったの二文字が、僕の人生だけでなく、アツや、佳大さんの人生、そのものを変えるくらい、重たいものだと、ようやく僕は気付いた。 「未央・・・キスさせて・・・」 頬にそっと触れる彼の手。 涙が出るくらい、暖かい。 頷く間もなく、彼の口唇が、僕の唇を塞ぐ。 「ごめんね、アツ。土曜日まで待ってくれる⁉」 涙ながらに返すと、「分かったよ」って彼。わざと明るく振る舞ってくれた。

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