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駆け落ち予行練習 決行当日

そして迎えた金曜日。 昨日から、楽しみで、そわそわと落ち着かない。お陰で、寝不足気味。 遠出は、去年の修学旅行以来だから、尚更なのかも。 車から下りて、走り去るのを確認してから、アツが。 「夜七時五十五分に誰も見つからないように、裏口に集合な。八時を過ぎると、セキュリティーのスイッチが入るから」 普段と変わらない優しい笑顔に、朝から、ドキドキし通しで。僕の心臓大丈夫⁉なくらい、心音が喧しい。 アツと談笑しながら校門の所まで来て、足が急に止まった。 だって、思いもよらない人が待っていたから。 「未央には、もう無関係だよ」アツに、手首を掴まれ、早足でその人の前を素通りした。 「未央‼待ってくれ‼」 辺りに響き渡るその人の悲痛な叫び声に、忙しく行き交っていた他の生徒たちも、思わず振り返った。 「アツ、待って‼」 「未央が、うちに来て、一週間。その間、連絡を寄越したり、会いに来てくれた⁉」 アツの言う通りだ。 「でも、僕の父さんだから・・・」 アツのおうちの子になっても、父さんは父さんだもの。 「分かったよ。五分だけな」 ごめんね、頑固者で。 アツが、携帯を耳にあて、誰かと話しを始めた。僕は、何度か振り返りながら、校門まで引き返した。 「未央、元気そうだな」 久し振りに見る父さん。なんか、やつれてる。 顔の気色も良くないし、頬も、痩けて・・・。 「父さんこそ、大丈夫⁉」 「お前は、優しいな。あれだけ酷いことされて・・・父さんたちの事、恨んでないのか⁉」 「うん。だって、今、すごく幸せだから」 父さんに心配を掛けまいと、わざと、明るく振る舞った。 「そうか。佳大さんと結婚するんだものな。良かったな」 笑顔を少しだけ見せてくれたけど。 表情は相変わらず険しいまま。 「未央、ご主人に、引き続き融資をしてくれる様に、頼んでくれないか⁉連絡は何度も入れているんだが、月曜日から、全く連絡が付かなくて」 「嘘・・・そんな・・・」 父さんの言葉に耳を疑った。 バタバタと、寺田さんが走ってくるのが見えた。警備員さんも一緒だ。 「中澤さん。未央さんは、もう貴方のご子息ではないんですよ。今後一切、会わない。関わらない、とご自分の口からおっしゃった事、もうお忘れですか⁉」 いつも穏やかな寺田さんが、珍しく声を荒げていた。 そして、初めて知る事実は、悲しいものだった。

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