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予行練習じゃないの⁉

車窓から眺める暗い空が、次第に白み始めた。 「少しは寝れた⁉」 「うん、アツは⁉」 「俺も少しだけ・・・もうじき着くよ。お祖父ちゃんが迎えに来てくれてる」 「まだ、五時前なのに、何か、申し訳ないね」 「気にしなくていいよ。孫は可愛いってよく言うだろ⁉」 「うん」 アツの口唇が、額と頬に触れーー。 「大好きだよ」 甘く囁かれ、唇をそっと塞がれた。 繋いでいた手に力が込められ、彼への思いが今にも溢れそうになった。 (アツ、僕ね・・・) 彼にちゃんと言わないと。 自分の気持ち・・・。 「着いたよ」 彼の唇が名残惜しそうに離れていった。 「そんな、哀しそうな顔をするな。キスくらい、いつでもしてやるから」 「アツ‼」 朝っぱらから、何してんだか。 バスを降りると、アツのお祖父ちゃんが笑顔で待っていてくれた。小さい頃、何度か会ったことがある。 髪はすっかり白髪になったけど、品の良さと、優しい眼差しは、記憶に残っている「たもつせんせい」のまま変わらない。 「まさか、本当に駆け落ちしてくるとは思わなかった」 「ごめん。どうせ、すぐ、佳兄が連れ戻しにくると思うから、それまで、匿って欲しい」 「あぁ、勿論だ」 二人の会話に頭が付いていけない。 「アツ、予行練習じゃなかったの⁉」 「ごめん、嘘ついた」 何事もなかったように、しれっとして彼。 「えぇ‼」 僕は、腰を抜かすほど驚いたのに‼

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