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只今、駆け落ち中‼

駅から車で四十分あまり。 市街地から田園風景が広がるのどかな郊外へ。 田んぼの真ん中に築三十年の二階建てのおうちがポツンと建っていた。 「未央ちゃん、疲れたでしょう。具合はどう?二階のお部屋にお布団敷いといたから、横になるといいわ」 アツのお祖母さんが、笑顔で出迎えてくれた。 「ありがとうございます‼あっ、そうだ‼お世話になります」 言うの忘れる所だった。 挨拶は肝心だもの。ペコっと頭を下げた。 「いいえ、こちらこそ」 「あれ、俺は⁉」 「篤人は心配いらないでしょ」 「なに、それ‼」 アツ、ほっぺをぷーって膨らませていた。 なんか、子供ぽっい所が可愛い。 アツが部屋を案内してくれて、布団にゴロンと横になると、「じゃあ、俺も」って、アツまで潜り込んできた。 「アツ‼」 「だめ⁉」 そんな哀しそうな目で見詰められたら、嫌とはいえない。 「変な事はしないから、抱っこだけさせて」 だらんと伸びた腕に頭を乗せると、そのまま抱き寄せられた。 アツの匂い・・・石鹸の匂いが微かに残ってて、不思議と落ち着く。 僕のなのか、アツのなのか、心臓の音が半端なく早い。今にも、飛び出してきそう。 そして、髪を擽る彼の息遣いが、心地いい。 うっとりとして目を閉じていたら、 「ごめん、勃ったかも・・・っていうか、朝勃ちは普通か」 って彼。焦る素振りを見せず、僕のお腹にすりすりと、擦り付けてきた。 「ちょと待って‼」 「待たない。今日は、土曜日だよ。返事、聞かせてくれるんだろ⁉」 「イジワルしないで」 「してない」 首筋や、額や、頬っぺたに、口付けが雨の様に降り注ぐ。 「・・・好き・・・」 観念して、ぼそっと呟いた。 だって、目茶苦茶、恥ずかしいんだもの。 面と向かって言う勇気が僕にはない。 それなのにアツたったら・・・。 「聞こえない」 「えぇーー‼何で⁉」 「もう一回。おっきい声で」 「・・・嘘・・・」 アツ、いつからこんなに意地悪になったんだろう。

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