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南海の島
佳大さんに、強引に海外に連れ出され数週間後ーー。
インド洋に浮かぶ、ガーランド王国。北海道ぐらいの面積の島国で、観光資源と漁業が主な産業の貧しい国だったものの、近年、領海内に天然ガスが発見され、経済発展が著しい途上国。
公用語は意外も英語。
国名は、この島を発見した大英国時代の、ガーランド提督から命名され、長く、植民地支配下に置かれていた。
今、僕が住んでいるのは、首都オキーフの郊外に位置する富裕層の居住区。
政府関係者や、大使館の家族ら、多くの外国人が住んでいるみたいで、出入り口には、ゲートがあって、国軍の兵士が二十四時間体制で監視する、厳重な警備態勢がとられていた。
集合住宅の窓から見える、紺碧の空も、赤い大地も、青く透き通る海もーー。
人も、言葉も、街の光景もーー。
僕は、なにひとつ知らない。
空港に到着して早々、具合が悪くなり、病院に直行し、そのまま、丸二日寝たきりに。
亜熱帯特有の、肌にまとわり付く、じめっとした蒸し暑い気候に、まだ、体が慣れてなくて、一日おきぐらい体調を崩しては寝込む毎日。
「おはよう。具合はどうだ⁉」
額に佳大さんの口付けが優しく降る。
「昨日よりはだいぶ良くなったかも」
「そうか、良かった。じゃあ、仕事に行ってくる。なるべく早く帰るから、留守番頼む」
今度は耳朶に口付けが降ってきた。
『今晩いい⁉』
甘く囁かれ、一瞬で血の気が引いた。
体調が安定しない僕を、彼は気遣って、キスやハグ以外の事は強いることはなかった。
キスもハグも、吐き気がするくらい嫌で嫌で仕方なかった。どんだけ拒んでも、抗っても、結局最後は力負け。
だから、諦めた。
でも、エッチだけは・・・アツ以外の人とは、絶対イヤだ。
「佳大さん、僕・・・」
唇がわなわなと震える。
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