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囚われ、囲われて

「ん⁉どうした⁉また、熱が出てきたか」 「だ、大丈夫・・・」 彼に触れられるのがイヤで、顔を逸らした。 「そうか、それならいい」 ギシッと、ベットが軋み、離れていく彼。立ち上がると白シャツの上にスーツを颯爽と羽織った。 「あの・・・」 「何だ⁉」 「やっぱり、いいです」 聞こうかと思ったけど、止めた。 彼が何の仕事をしてるのか。 医療費や、食費、家賃の他に、居候の僕を養うだけでも大変なのに。 「未央・・・」 不意に呼ばれ、顔を上げると、唇に彼の口唇が重なり、そのまま、抱き絞められた。 (イヤだ‼) 軽く手を握り、彼の胸元をポンポンと叩いたけど、びくともしない。 「佳・・・ぅ、う‼っん‼」 薄く開いた唇を抉じ開けて、彼の舌が口腔内に侵入してきた。 逃げる間もなく、舌に絡み付いてきて、ねっとりとなぶりまわされ、あまりの激しさに息が出来ず、手足をバタつかせると、ようやく離してくれた。 「行ってきますのキスだよ、未央」 口の端から、飲みきれなかった唾液が、一筋溢れ落ちて、それをペロっと舐めた彼は、満面の笑みを浮かべてた。 「俺が何の仕事をしているか、知りたいんだろ⁉」 僕の心の内は、見事に看破されていた。 「大学の同期に、この国出身の留学生がいて。その彼と、日本食レストランの経営と、観光に携わる仕事をしている。日本で経営していたIT関連の会社を売却した資金を元手にして。未央や、家族を養うくらいの蓄えは十分にある。だから、安心して、子作りに勤しめるーーという訳だ。まずは一人・・・かな⁉」 佳大さんが、おもむろにお腹を撫でてきて、全身鳥肌が立った。 「そんなに嫌がるな。まぁ、そういう未央を屈服させ、組み伏してーー俺のモノにするのも、悪くないかもな」 「・・・鬼・・・」 涙と共に、零れ落ちる彼への恨み言。 「みいくいあひるのこと罵られ、捨てられたお前を助けたのは俺だ」 「・・・違う・・・アツだよ・・・」 大好きな彼の名前を絞り出した。 「今、一番聞きたくない名前だ。まぁ、いい。今晩、何があっても、お前を抱くーーいいな⁉ お前の口から、俺の名前しか出ないように、可愛がってやるから、覚悟しておけ」 脅すような、強い口調だった。 見上げると、今までにないくらい、恐い顔をしていた。視線を合わせることなく、身なりを整えると、「じゃあ、行ってる」そう言い残し、仕事へと向かっていった。 一人残された僕は、膝を抱え、涙に暮れた。 アツに会いたい‼ 日本へ帰りたい‼ 決して叶わないとは分かっていても、諦めたくはなかった。

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