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本当に産んでいいの⁉

「さっきから何回、同じ事を聞いたら気が済むんだ⁉」 「だって・・・」 にわかには信じられないんだもの。 てっきり、堕ろせって言われると思っていたから・・・。 一ヶ月後に検診の予約を入れ、病院を後にして、そのまま、役所に向かった。 そこで初めて、彼が帰化申請を出しているのを知った。 (認可が下りたら、もう二度と日本に帰れない・・・アツに会うことも出来ない。”待ってて”って言ったの嘘になる・・・) 計り知れない不安と、何も出来ない自分への苛立ちーー。 彼は、果たして、いつ気がつくのだろうか。 僕のこの思いに・・・。 先生が書いてくれた書類を窓口に提出すると、担当の職員さんと、彼、しばらくの間、立ち話をしていた。 「在留する外国人に、妊娠届の提出が義務付けられているんだ。未央、これで、信じてくれるか」 半ば呆れてた。 「父親がアツでも、俺は気にしない。未央が産む子供は、夫である俺の子供ーーそれでいいだろ⁉」 頷くと、不意に伸びてきた彼の手が、右手に絡み付いてきて、そのまま強く握り締められた。 「・・・アツの事を諦めろ。そして、全部忘れろ。これからは、俺の妻として生きろ。なぁ、未央・・・」 何故、そんな悲しいことを、平然と言えるの。 僕はアツを信じてるのに・・・。 何年、何十年掛かっても、絶対、迎えに来てくれるって、信じてるのに。 「本当、頑固だな。顔に書いてあるよ。『絶対、イヤだ』って」 佳大さん、にこやかに笑っていた。 こんな風に彼が笑うの、初めて見るかも。 「紹介したい人がいるんだ。ほら、行くぞ」 ぐいぐいと手を手を引っ張られ、そのまま外に出ると、運転手さん付きの黒いセダンタイプの車が待っていた。 「歩いて十分も掛からないんだが、この暑さだ。もう未央一人だけの体じゃないんだ。大事にして貰わないと」 佳大さんは、気持ち悪いくらい優しくしてくれた。 手はずっと繋いだままで、後部座席に乗り込むと、すぐに、車が走り出した。 運転手さんが笑顔で、彼に、何かを話し掛けていた。 「佳大さん⁉」 「父親になるんですね、おめでとうって・・・だから、ありがとうって答えた。そんなに、嫌がるな。もう少しこっちこい・・・」 彼の腕が腰に巻きついてきて、そのまま抱き寄せられた。 嫌悪感からか、全身に鳥肌が立った。 僕に、触れないで。 お願いだから・・・。

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