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思いがけない再会
佳大さんが家に戻ってきたのは、八時過ぎ。
「飛行機の到着時間がかなり遅れたんだ・・・ごめんな、遅くなって」
「飛行機・・・って?」
家政婦さんは、てっきり現地の方なのかなって思っていた。
「具合が悪くても言葉が通じなかったら大変だろ?」
彼が、後ろに目を遣り、どうぞって言うと、思いがけない人が姿を現した。
「・・・嘘・・・」
信じられなくて、目をパチパチさせて、何度もその人を見つめ返した。
「何で・・・雅枝さんが・・・」
吃驚しすぎて、声が震えた。
「未央ちゃんから電話を頂いた後、奥様が、すぐに未央ちゃんの所に向かうよう命じられたんです。異国での初めての妊娠に、言葉も通じず、苦労しているだかろうからと。安定期に入るまで、この雅枝が、未央ちゃんをお守り致します」
「ありがとう、雅枝さん。すっごく嬉しい」
「まさか、この年になって、海を渡るとは思いませんでしたけど」
雅枝さんの笑顔を見ているうち、自然と笑みが溢れた。
僕だって、まさか雅枝さんが来てくれるなんて思いもしなかったから。
佳大さんが、大きいスーツケースを二個も運んできた。
「こちらは奥様からです」
リビングで、雅枝さんに言われて開けると、マタニティーの服や、赤ちゃんの肌着や、育児書、お菓子や、乾燥麺、調味料など、これでもかとギュウギュウに詰めてあった。一番下には。
「お米・・・⁉」
「大旦那様からです。福島の米は美味しいと仰って。ちょうど新米の時期ですし、未央ちゃんに食べて欲しいと預かって参りました。あと、地元で美味しいと有名なお味噌も」
「ありがとう・・・」
アツのお祖父ちゃん、お祖母ちゃんありがとう。
おばさん、ありがとう。
みんなの優しさが、心に染み渡る。
僕は一人じゃない。
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