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手紙

「未央ちゃん、二枚目以降もご覧になって下さい」 雅枝さんに言われ、涙を手で拭って、二枚目を開いた。 「・・・漢字の書き取りの練習じゃないんだよ」 思わず吹き出しそうになった。 端から恥まで、今度は、『未央ごめんな 泣かせてごめんな』の一文がびっしり書いてあった。 「アツったら・・・僕、日本語忘れてないよ」 笑ったり、泣いたりーー目まぐるしい。 鼻を啜りながら、三枚目を開いた。 『はると かずと ゆうと そらと さくと かなと よしと ゆきと かいと・・・』 今度は、端まで、男の子の名前が平仮名でびっしり書いてあった。 うち、”はると”と、”ゆうと”と、”かなと”には、赤ペンで、丸が付けられていた。 「それはですね、篤人様が、産まれてくるお子様が、百パーセント、絶対男の子だから、そう仰って。本や、携帯で熱心に調べておりました。気に入った呼び方に丸をつけてました」 「そんな・・・気が早いよ・・・もし、女の子だったらどうするの?」 「それはあり得ないと、断言してましたよ篤人様が。どういう訳か、鬼頭家は、女の子があまりお産まれにならない家系でして、万が一でも、女の子だった時は、その時考えると仰ってました」 「雅枝さんありがとうございます・・・」 軽く頭を下げ、お腹に手をあてた。 「パパがね、名前を一生懸命、考えてくれたよ。どんな名前になるのか、楽しみだね」 アツとどんなに離れていても、心は、この子と共にある。 それだけで不思議と勇気が湧いてきた。

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