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奏人

「鬼頭家は、どういうわけか男子しか産まれないんだ。だから、未央の子も男の子だよ。カナトという名前は・・・俺と、頼人・理人の間にもう一人産まれるはずだった子供がいたんだ。その子の名前が、人生を奏でる人になって欲しいという意味を込めて、奏人(かなと)なんだ。未央が嫌なら、違う名前を考えるが・・・」 「奏人でいいよ・・・名前・・・」 「じゃあ、決まりな」 佳大さんが、お腹に手をあてて、「奏人、パパだよ」そう声を掛けてくれた。 (本当のパパはアツなんだよ) 心の声が、奏人に話し掛けた。 こんなだめなママでゴメンね。 抗う事も、逃げる事も何一つ出来ない。 泣くことしか出来ないママで、ゴメンね。 「未央、頼みがあるんだが、いいか?」 ベットの上に座った彼に、膝の上に座るように言われた。 「何もしない。ただ、未央を抱き締めさせて欲しい」 そう言いながら、いつも、エッチなイタズラを仕掛けてくるくせに。 もう騙されないよ。 頬っぺたを膨らませて、彼を睨み付けた。 「そんな怖い顔するな。今日こそ、なにもしない」 「・・・本当?」 「あぁ」 恐る恐る、前向きで、彼の膝の上に座った。 「明日の検診なんだが、仕事がどうしても休めなくて・・・雅枝さんに付き添って貰うといい。タクシーは手配してあるから、いいな?」 「はい」 佳大さんの腕が背中と腰に回ってきて、そのまま抱き寄せられた。 「・・・今、何ナンパーセント、俺の事か好き?」 「へぇ⁉」 急に変な事を聞かれて、素っ頓狂な声がでた。 普通、この状況で聞く? 「未央、教えて」 しかも、彼の声、いつもより弾んでるし・・・。 どうしよう。

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