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愛する彼の声を聞かせて

エコーの白黒の画面に写る奏人。 小さな命は、僕のお腹の中で、懸命に生きてる。 「頭殿長ーー赤ちゃんの頭から足の大きさは、四センチくらいかな。順調よ。今は、頭の大きさが、体の半分を占める二頭身だけど、段々と人の形をしてくるから」 「ありがとうございます、先生」 看護士さんが、お腹を拭いてくれて。 服を直して、ベットから起き上がろうとしたら、立ち眩みがした。 腰が怠くて、自分の体重を支えられない。 「大丈夫?」 崩れ落ちる前に先生が抱き止めてくれた。 まだ足がふらついていて、そのまま、ベットに横になった。 「ちゃんと睡眠とってる?」 「あっ、あの・・・」 すぐに答えられなかった。 一度火が付いた彼の暴走はなかなか止まらない。 ベットの上で、何度、中に出されたか・・・。 お風呂の中でも、頭が朦朧とするまで抱かれて、何度、中に出されたか・・・。 記憶が曖昧でよく覚えてない。 気が付けば、彼の腕に抱かれて、眠っていた。 「御主人に明日、病院に来るように伝えて貰える?」 「あの・・・先生?」 「新婚なのは分かるけど、今が一番大事なときなのよ。未央ちゃんは、私からしたらだ子供。普通の妊婦さんとは違うの。かなりのリスクを伴っているのよ。面と向かって言えないでしょうから、私から直接、御主人に言うわ」 「・・・はい・・・お願いします・・・」 先生が何を言わんとしているか、最初、意味が分からなくて。ようやく理解した時、あまりの恥ずかしさに、先生の顔を直視出来なくて目を逸らし、蚊のなくような声で答えた。 「今、案内するから、体調が落ち着くまで別室で休んでから、帰るように。分かった?付き添いの方にも声を掛けておくから」 「・・・あの、先生・・・」 「どうしたの?」 無性にアツの声が聞きたくなった。 なんで、このタイミングなのか分からないけど。 「・・・電話・・・貸してください」 気が付いたら、そんな事を口にしていた。 「日本に・・・大切な人がいるんです・・・その人の声がどうしても聞きたくて・・・電話代は、少しずつお返ししますから・・・お願いします、先生・・・」 声は涙で震えていたけど、なりふり構わず、深く頭を下げた。 「もしかして、その子の本当のパパ?」 先生は、すべて、お見通しだった。 泣きながら小さく頷くと、胸のうちポケットから携帯を取り出して、僕の手に握らせてくれた。 「電話代は気にしなくていいから」 「すみません・・・先生・・・ありがとう・・・」 日本は、二時間進んでるって、確か。 なら、今、ちょうどお昼ごはんの最中。 アツ、いるかな? 先生に、日本への電話の掛け方を教えてもらった。 看護士さんに、隣の部屋に案内してもらい、ベットの上に腰を下ろし、日本の国番号の、八十一と、アツの携帯の番号を、間違えないように押した。

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