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佳大さんにはナイショの約束
プルル~
プルル~
着信音が鳴り続いてる。
アツ、なかなか電話に出てくれない。
間違い電話だと思ってるのかな?
知らない番号から掛けているんだもの。イタズラだと思うよね、普通。
僕だよアツ。
お願いだから、電話に出て。
『・・・はい、もしもし・・・』
ようやく聞けた‼
大好きな彼の声。
飛び上がるぐらい嬉しい‼
「アツ、未央だよ」
『未央・・・?嘘・・・?マジ・・・⁉佳兄、よく許してくれたな』
「佳大さんには内緒。今日、妊婦検診があって、担当の先生に借りたの」
『妊婦検診?・・・そうだ‼未央‼名前付けないと』
アツの慌てっぷりに、思わず吹き出しそうになった。
「あのね、”奏でる”の奏に、アツの下の名前貰って、奏人って名付けたの。ごめんね、アツに相談しなくて」
『いいよ、そんなの、気にしてないから。奏人かぁ~。俺、父親になるんだな。すげぇ、嬉しい。そうだ、未央‼それより体調は?母さん、悪阻が酷いんじゃないかって、心配していたから』
「悪阻はないの。一応、男だから・・・みたい。先生の話しでは・・・。体調は・・・あんまり良くない。でもね、赤ちゃんは順調に育ってるから、心配しないで」
『たく、お前はいつもそう。辛いことがあっても、我慢して、心配しないでって言う。もう、我慢するな』
「だって・・・」
アツの声を聞いただけで、目が潤んでいるのに。
そんな優しい事言われたら、今にも、涙腺が崩壊しちゃうよ。
『未央』
アツ、宥めるように、名前を呼んでくれた。
佳大さんに奪われた、何気無い幸せ。
ようやく、この手に戻ってきてくれた。
「アツに会いたいよ・・・日本に・・・帰りたいよ・・・」
『未央、偉いぞ。我慢しないで言えたな。自分の気持ちを』
「うん」
涙に滲む声で頷くと、彼、急に小声になった。
『近いうちに迎えに行く。佳兄を説得出来る、強力な助っ人を連れていくから、もう少しだけ、辛抱してくれ。そっちには、雅枝さんもいるし。あと、この話しは、佳兄にはナイショ。俺と未央だけの約束だ』
「分かった」
アツと話していたら、ガタンと、ドアが開いて、慌てて、電話を切った。
ごめんね、アツ。
一方的に、電話を切って・・・。
だって、内緒の約束だもの。
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