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夢にまで見たアツとの再会
「日本へ帰れ・・・アツが迎えに来てるから」
「アツが・・・!?本当に!?」
嬉しいはずなのに、佳大さんを一人残して、日本に帰る後ろめたさに、心が苦しくなった。
「そんな顔をするな、アツに渡すが惜しくなるだろ?」
「だって・・・」
「俺を大事に思ってくれる、その気持ちだけで、充分だ。ありがとう未央。短い間だったけど幸せだったよ」
佳大さんはそれだけ言うと、力なく椅子から立ち上がり、扉をゆっくりと開けた。
そこには、僕の大切な人達が立っていた。
「・・・アツ・・・お祖父ちゃん・・・お祖母ちゃん・・・なんで・・・?」
よろよろと、やっとの思いで上体を起こした時、アツの腕の中にすっぽりと包まれていた。
「未央‼会いたかった‼」
受話器越しにしか聞けなかった彼の声。
こんなにも心に響くなんて・・・。
懐かしい匂い。
柔らかな肌の感触。
温かなこの温もり。
もう二度と触れることがないと諦めていたのに・・・。
「アツ、会いたかった‼」
夢でも、幻でもない。
ようやく会えたんだ。
大好きな彼に‼
「迎えに来たよ、未央。佳兄を説得するのに、お祖父ちゃんたちに頼んだんだけど、意味がなかったな・・・ごめん、みっともないな、男なのに泣くなんて・・・」
アツの言葉に、はっとして、彼の顔を見上げると、涙をはらはらと静かに流していた。
「大変な時にいなくてごめんな。奏人を守ってくれてありがとう。これからは、俺が、未央や、奏人を守るよ。ずっと一緒だ」
「うん、ありがとう、アツ・・・もう、やだ、・・・なんで僕まで泣いてるの・・・」
アツから貰った涙で、僕の顔はきっとグジャグジャになってる。
こんな可愛くない顔より、笑顔を見せたかったのに。
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