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夢にまで見たアツとの再会
「未央、ごめん。苦しいだろ?」
慌てて、アツが体を離した。
「本当に、泣き虫なんだから」
「アツだって、人の事いえないでしょ」
お互い目が合って、自然と笑みが溢れた。
「・・・お腹・・・触っても・・・大丈夫?」
って彼。恥ずかしいのかな。
耳まで真っ赤になってる。
なんか、カワイイ‼
笑いを必死で堪えて、大きく頷くと、
彼、ちょっとだけ、頬っぺたを膨らませていた。
「奏人、パパだよ・・・」
アツの大きな掌が、お腹を優しく撫でてくれた。なにも、そんなに、緊張しなくてもいいのに。手も、声も、がちがちに震えてる。
「あの・・・篤人・・・」
後ろから、申し訳なさそうに声を掛けてきたのは、お祖母ちゃん。
「ごめん、お祖母ちゃん」
アツは、近くにあった椅子を、僕の枕元に近い場所に置いた。
そこに、よっこらしょと、お祖母ちゃんが腰を下ろした。
「いゃあ、大変だったのよ。ガーランド王国行きの直行便がなくて。日本人には、まだ馴染みが薄いのね。それ、どこにあるんですか?って逆に聞かれる始末で。だから、取り敢えず、マレーシア行きの飛行機に乗ったの。着いてから、知ったのは、一日二往復しか便がないこと。しかも、運休、遅れることもあるって聞いて。急いで、未央ちゃんの所に行きたかったんだけど、マレーシアで、二日足止めされて・・・ごめんね、もっと早く駆け付けていれば良かったのにね・・・」
お祖母ちゃん、目にいっぱい涙を溜めていた。
「孫に頼まれたとはいえ、この年になって、まさか、海外に行くとは思わなかった。でもね、未央ちゃんや、ひ孫が待っていると思えば、お祖父ちゃんと、お祖母ちゃん、どんな秘境の国でも飛んでいくわ。大変さなんて、全然苦にならないもの」
「お祖母ちゃん、ありがとう、こんな僕の為に・・・」
「未央ちゃんは、私にとって、孫みたいなもの。それよりも、私も触ってもいいかしら」
「はい」
お祖母ちゃん、すごく嬉しそうに、お腹を撫でてくれた。
「奏人、お祖父ちゃんと、お祖母ちゃんですよ。日本で待ってるじいじと、ばあばも、あなたに会える日をすごく楽しみにしているのよ」
お祖母ちゃんにとっては初めてのひ孫になり、
アツの両親にとっては、初孫。
お祖母ちゃん、感極まったのか、目頭を押さえていた。
お祖父ちゃんは、今にも泣き崩れそうになって、佳大さんに体を支えて貰っていた。
「お祖父ちゃんが一番あなたを心配していたのよ。産まれた時からずっと未央ちゃんを見てきたから。辛い思いをしてきた分、幸せになって欲しいって、誰よりもそう願っていたから」
「お祖父ちゃん、ありがとう・・・」
そうだ、お礼言わないと。
「お米と、お味噌ありがとう。食欲がなくても、不思議と、ご飯と、お味噌汁は食べれたよ」
「それは良かった・・本当に良かった」
お祖父ちゃん、ご飯美味しかったよ‼
お味噌汁も‼
「お祖母ちゃんが作ってくれた、ざくざくが食べたい」
「いくらでも作ってあげるわ。いくらでも・・・」
お祖母ちゃんも、その場に泣き崩れて、アツと雅枝さんが、体を支えていた。
奏人はいいね。
鬼頭のおうちのみなさんに、こんだけ愛されて。
ママ、羨ましいよ。
「だから、もう、自分を卑下しないで。
未央ちゃんは、醜いアヒルの子じゃないわ。
篤人の妻で、奏人のお母さんになるんだから。
ね⁉」
「そうだよ、未央」
お祖父ちゃんと、お祖母ちゃんが励ましてくれて。
アツと、佳大さん、最初こそ、ぎこちなかったけど・・・。
どんなに喧嘩しても、ちゃんと仲直りして欲しいな
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