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待ちに待った日本へ・・・待ち構えるのは深い闇
帰国までの二週間はあっと言う間に過ぎていった。
乾先生から、絶対安静で‼
と言われ、身動き取れなかったけど、毎日、アツや、雅枝さん、お祖父ちゃん達が欠かさずお見舞いに来てくれた。
看護士さんの話しでは、佳大さんも来てくれてるみたいだけど、僕が寝ている時間にちらっと顔をだす程度みたいで、あれから、佳大さんの顔を見てない。
乾先生から、退院の許可が下り、
雅枝さんに手伝って貰って帰り支度をしていると、アツが、佳大さんの手首を掴んで入ってきた。
「佳兄、病室の前に立っていたんだ。何も言わず帰ろうとしたから・・・佳兄、未央に言いたい事があるなら言わなきゃ」
「あぁ、そうだな」
佳大さん、一回り小さくなった感じがする。
仕事が忙しいのかな?疲れからか顔色が悪い。
ご飯、ちゃんと食べてるのかな?
「アツ、五分でいいから、未央と二人きりにさせて欲しい・・・ダメならいい」
「俺は構わないけど・・・」
アツの視線が僕に向けられた。
同意を求められ、断る理由がないから頷くと、雅枝さんに声を掛けて、佳大さんと二人きりにしてくれた。
何でだろう。
ものすごく緊張する。
額や、手に汗いっぱいかいてるし。
心音も五月蝿いくらい喧しいし。
「なんでそんなに緊張するかな?別に捕って喰おうなんて考えてないから、安心しろ」
佳大さんに苦笑いされちゃった。
やっぱり彼には、隠し事は出来ない。
ベットに並んで腰を下ろすと、遠慮がちに彼の手が伸びてきて、手をそっと握られた。
「アツに話しはしたんだ。未央は返すけど、帰化申請は取り下げる気はないって」
「佳大さん・・・?」
「アツに、この国で最高峰学府のスーリア王立大学への進学と、決して、邪魔はしないから、未央と奏人の側において欲しい、その二つを頼んだ。未央、アツとよく話し合って決めて欲しい」
彼なりに考えた決断に、僕は、頷くだけで精一杯だった。
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