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待ちに待った日本へ・・・待ち構えるのは深い闇
「佳兄、話し終わった?」
アツが戻ってきた。
「ハグがまだだ」
「はぁ⁉」
眉をひそめたアツの目の前で、佳大さんにムギューと抱き締められた。
アツは、怒っていいのか、見てみぬふりをしついいのか分からず戸惑っていた。
そのあと、お祖父ちゃんたちも合流し、お世話になった乾先生やスタッフの皆さんにご挨拶して病院を出ると、ディネシュさんが、大勢のご家族の方と待っていた。
第一夫人さんから、第二、第三、第四・・・って、奥さん、どんだけいるの‼
皆さん、小さなお子さんの手を引いていたり、腕に赤ちゃんを抱っこしたりと、一夫多妻ならではの大家族の光景に、しばし呆然としてしまった。
「ヒーリーおいで」ディネシュさんと、佳大さんが一人の名前を呼ぶと、ディネシュさん似の、これまた背の高い男性が前に進み出た。
「妻のアニラの弟の、ヒーリーだ。日本語の勉強をしたいと言ってね。しばらく、面倒をみて貰いたいんだが・・・」
佳大さん、僕の体調を第一に考え、帰りもプライベートジェット機をディネシュさんに頼んでいて、お祖父ちゃんたち、ヒーリーさんを連れ帰ることを快諾した。
「息子がダメなら、福島に連れていくから大丈夫だ。任せておけ!」
ってお祖父ちゃん頼もしい。
お祖母ちゃんと二人、早速ヒーリーさんと挨拶をしていた。二人とも、お仕事の関係で英語が堪能でビックリした。
「ハジメマシテ」
片言の日本語で話し掛けられ、思わず体を一歩後ろに引いた。
英語は無理です‼
そんな得意じゃないんです。
ごめんなさい‼
「未央、大丈夫。日常会話程度なら話せるって」
「本当?」
「あぁ」
アツに言われ、恐る恐る彼の顔を見上げた。
上を見すぎて首が痛くなりそう。
「コンニチワ、ヒーリーデス。トシハニジュウト、サンデス」
「初めまして、鬼頭未央です」
年はいいかな?
背も、体も小さいから見た目で分かるよね?
「ミオ、ハジメマシテ。ベィビー?」
お腹を見下ろし、にっこりと笑い掛けてくれた。
「この子は、奏人です」
「カナトモヨロシク、ヒーリーデス」
ディネシュさんと同じで、彼も社交的な印象を受けた。
ディネシュさんご家族に別れを告げ、重い荷物は、アツと、佳大さんや、ヒーリーさんが持ってくれて、佳大さんがチャターしてくれたハイヤー二台に分乗し、空港へと向かった。
車中で、アツと、佳大さんは一切会話を交わさなかった。二人の間に座ったものの、どっちを見ていいか分からず、しばらく下を向いていたけど、空港が近付くにつれ、どうにかして仲直りをさせてあげたいと思った。
だって僕には、弟がいないから、したくても出来ないもの。兄弟喧嘩。
出来る二人が何だか羨ましい。
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