73 / 120
僕にとって家族とは ・・・帰る場所は・・・
高校の校門のところで別れたきり、数か月振りの親子の再会。
あの頃と比べると、少しやつれた感じはするけど、見た目はさほど変わってはいなかった。でも、中身は・・・。
「突然いなくなるから、父さん、心配したんだよ。あちこちと随分探し回ったんだよ。まさか、入院していたとは・・・」
獲物を付け狙う肉食獣みたいに、父の目はギラギラと血走っていた。鼻息も荒く、ニタニタと卑猥な笑みを浮かべ、ベットの上に這い上がってきた。
じりじりと近付いてくる父のその姿は、あのときと全く同じ。
脳裏に忌まわしい情景が鮮明に浮かんできた。
「いゃーー‼来ないで‼」
後ずさりしながら、ありったけの声で叫んだ。
「未央、お父さんに、そんな悲しいことを言わないでくれ」
「僕には・・・父さんは・・・いない」
目に涙をいっぱい溜めて、ブンブンと頭を振った。
「そうかぁ、父さんはいないか・・・それなら、もう、誰の目も憚る事もないな。未央、愛してるよ・・・ずっと、ずっと前から・・・」
氷よりももっと冷たい父の手が、頬にじかに触れてきて、ゾクゾクと背筋に鳥肌が立った。
「触らないで‼いやだ‼」
壁に背中がついて、もはや逃げ場はない。
「泣くほど会いたかったのか。そうか、それなら、うんと可愛がってやらないとな」
鼻にかかる父の息は、酒と煙草の匂いがぷんぷんした。
吐き気がするくらい気持ち悪くて、頭がクラクラしてきた。
口付けされそうになり、咄嗟に、父の頬を叩いていた。
「ご、ごめんなさい・・・でも・・・こんなの、絶対おかしいよ。なんで、僕なの⁉あの人は?」
「あぁ、あいつか。あんな女より、未央がいいに決まっているだろ⁉気色の悪いお前を誰も相手にしないだろ?だから、父さんが可愛がってやると言っているんだ。四六時中抱いて・・・抱き潰し、父さんの子を産んで・・・佳大さんに抱かれるより、父さんに抱かれる方がもっと気持ちいいぞ・・・早速、試してみようか?」
父さんは、狂ってる。
僕の知っている優しい父の姿は、微塵もなかった。
「嫌だ‼絶対嫌だ‼」
何とかして逃げようとしたしたけど、父さんの大きい体が、僕の体に覆い被さってきた。
「いやーーぁぁ!!」
押し倒され、すぐに蛞蝓みたいにべとべとした父さんの口唇に、唇を奪われた。
もう、だめ・・・かも・・・。
あきらめかけた時、枕元のナースコールが目に入った。
僕はどうなっても構わない。
でも、奏人だけは守らなきゃ。
その思いで必死に手を伸ばした。
ともだちにシェアしよう!