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僕にとって家族とは・・・帰る場所は・・・

「赤ちゃんが・・・お腹の中に赤ちゃんがいるの・・・だから、止めて・・・お願い・・・だから」 あと少しなのに届かない・・・。 奏人を守る為、必死に抵抗を試みた。 「佳大さんとの子か?お父さん以外の子供は・・・いらない。必要ない」 冷たく言い放つと、パジャマの釦に手を置いて、一気に引きちぎった。ビリビリと生地が裂け、釦が飛び散り、真っ平らな胸がヒンヤリとした外気に曝され、思わず胴震いした。 「透き通った綺麗な肌だ・・・胸が膨らんで・・・乳首もツンと勃って・・・」 鼻息が更に荒くなった、父の手が、肌の感触を確かめる様に、乳輪の上を這い回った。 もう片方の手は、お腹の上を這い回る。 反吐が出るくらい気持ち悪くて、総身が戦慄いた。 「もう、止めて・・・父さん・・・」 泣きながら見上げると、鬼のような残酷な笑みを浮かべていた。 「さほど目立たないから・・・三か月か四か月くらいか?佳大さんもなかなかやるな。まぁ、このぐらいなら流産させるのもたやすいか・・・」 父は本気だ。 僕から、何が何でも奏人を奪おうとしている。 「奏人は殺させない・・・僕とアツの大事な・・・大事な赤ちゃんだもの・・・」 「アツ!?あぁ、末っ子の篤人の事か?お前、佳大さんだけでは満足しなくて、彼も咥えこんだのか?とんだ淫乱だな」 「違う・・・」 必死で首を横に振った。 「何が違うって?体に聞けば手っ取り早い」 「やめてーー!!やだーー!!」 父の口が乳輪にしゃぶりついてきて、ありったけの声で叫んだ。 ガタン!! 荒々しくドアの開く音がして、 「ミオ!!」 片言の日本語で駆け込んできてきたのはヒーリーさんだった。 「未央!!」 「未央!!」 続けて、アツによく似た声の持ち主が二人・・・。 「理人・・・先輩・・・頼人・・・先輩・・・なんで?」 ヒーリーさんは、僕から父を引き離すと、羽交い絞めにしてその場で取り押さえた。 父も必死で抵抗を試みるも、彼の腕力、体格差にはどうやっても敵わないとみると、急に大人しくなった。 「大丈夫か?」 駆け寄ってくれた二人が、制服の上着を脱ぐとそれを僕に掛けてくれた。 「汚れるから・・・」 「いいんだ」 「気にするな」 「でも・・・なんで・・・そんなに・・・優しくしてくれるんですかこんな僕に・・・」 「だって、俺ら家族だろう?」 二人の声が見事に重なった。 「家族・・・?」 「そう」 普段は、ちょっと苦手な理人先輩と、意地悪な頼人先輩が、僕に、優しく微笑みかけてくれていた。

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