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真実は悲しくて

「未央!!」 ドタバタと次に姿を現したのは、アツのお母さん。そのままギュッと抱き締められた。ベージュ色のスーツからはほのかに消毒液の匂い。 「家に向かっていたら、理人から電話を貰って・・・良かった無事で・・・」 おばさん泣いていた。 「怖かったね。もう大丈夫だからね」 何度も背中を擦ってくれて・・・。 なんで、おばさんもこんなに優しくしてくれるの? 「どこか痛いところはない?佐々先生呼ぼうか?」 「本当に大丈夫です。何でもないですから・・・」 「何でもない訳でしょう」 おばさん声を荒げてすっと体を離してくれた。 「子供の心配をしない親なんていない・・・未央は、私にとって、大切な息子・・・」 「息子・・・?僕が?」 「そうよ」 「でも・・・僕は・・・親に売られた身だよ・・・」 悲しい事実を否定できない悔しさに涙が堰を切ったかのように、目から溢れ出た。 「確かにそうね。でも、そうもしなかったら、未央をあの家から――父親の許から引き離す事は出来なかった。もっと、悲惨な事になっていたと思うよ。私や主人は、五番目の息子を神様が授けて下さった、佳大達は、かわいい妹が出来たって、すごく喜んだのよ。親権を父親が離してくれなくて、一緒に住むことは中々叶わなかったけど・・・今はこうして、貴方の側にいれる事が嬉しい。しかも、初めての孫まで・・・ありがとう未央。ちなみに、主人の方が私より、もっと喜んでるのよ」 「そう、すごいよ家の中。ベビーベットに、チャイルドシートに、ベビーバスに、ベビーカー・・・全部、父さんが用意したんだよ未央」 「理人の言う通りだ。間違いなく男の子だからって、毎日の様に、赤ん坊の服を買ってくるんだよ。まだ、産まれてもいないのに。こっちは、受験勉強しないといけないのに、この服可愛いだろって見せられて・・・エライ迷惑なんだよ」 おじさんが・・・僕の為にそこまでしてくれるなんて・・・ 嬉しくて、涙がしばらく止まりそうもない。 「流石に面と向かって話しをするのは気恥ずかしいみたいだよ。息子だけど、一応、嫁だし・・・」 「父さん、意外とそういうところシャイだから」 「みんな、奏人が産まれてくるの楽しみにしているんだよ」 「おばさん・・・理人先輩・・・頼人先輩・・・本当にありがとう・・・」 おばさんが持っていたハンカチで涙を拭ってくれた。 「今は無理だとは思うけど、お母さんって呼んでほしいな・・・家族なんだし、他人行儀はもう終わりにしよう。理人も、頼人も、未央の兄なんだから、お兄ちゃんって呼んであげて・・・。あと、主人の事も、お父さんって呼んであげて」 鼻を啜りながら、何度も頷いた。 「・・・お・・・か・・・さ・・・・ん・・・」 震える唇でゆっくりとその言葉を紡ぎ出すと、感極まったおばさんが再度僕を抱き締めてくれた。 声を出して泣いた。 父との事は勿論、 ガーランドで辛かった事、苦しかった事、すべて曝け出して・・・。 気が付けば、病室の中に、おばさんと二人きりになっていた。 そして、僕が知らない、悲しい真実を静かに話し始めた。

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