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僕と奏人を守る為、アツが決意した事
「アツは知ってたの?」
「だいたいの事は聞いてはいたけど、母さんが自分で話すって言っていたから・・・ごめんな、未央」
「ううん、大丈夫」
ひとしきり彼の胸にすがって泣いて、今は、アツに腕枕をして貰い、ピタリと体を寄せ、ようやく落ち着いて、会話が出来る様になった。
父にされたことは口が裂けても言いたくない。
アツもそんな僕に気を遣ってくれて、その事に関しては一切触れなかった。
「福島のお祖父ちゃんの所へ行け。一番安全な場所だから・・・ヒーリーさんや、寺田が、未央の護衛として一緒に付いて行ってくれるから」
「えっ!?」
アツの言葉に耳を疑った。
「やっと、再会出来たのに何で!?離れるの嫌だ!!」
彼のシャツを掴んで、ぶんぶんと頭を振った。
「いつ、また今日みたいな事が起きるか分らないからだ・・・俺が、お祖父ちゃんちに通うから・・・もうじき冬休みだし、その間は一緒にいれる。あと、来年の四月から、お祖母ちゃんが理事を勤めている、私立の高校に転校することにしたから」
「アツ・・・」
どうする事も出来ないやるせなさに彼も悩んで、苦しんで・・・それで、決めた事なら、尚更。離れ離れになるのは辛いけど、彼の意志を尊重してあげないと・・・。
「遠距離・・・婚・・・出来るか自信ないよ」
「俺も、自信ないよ。でも、ガーランドほどじゃない。奏人の為だ、一緒に頑張って乗り越えよう」
「うん」頷くと、アツの腕に力が込められたのが分かって、彼の背中に抱き付いた。
「無理しなくていいよ・・・明日、退院だし、うちに帰ってから未央がその・・・嫌じゃなかったら・・・でいいから・・・」
「ごめんねアツ」
僕の体が震えていたのを彼は気づいていた。
だからこそ、何気なく気遣ってくれるその優しさに触れ、涙が出るくらい嬉しかった。
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