84 / 120
大好きな彼と繋がる幸せ ~家族団欒~
「あなた、未央から逃げて歩いてないで、ここに座って」
お母さんが、僕の前に置いてある座布団の上をポンポンと叩いた。
「もぅ、仕方ないなぁ」
「仕方ないじゃありません。一日中、あなたに避けられて、未央、あなたの事、嫌いになりますよ」
「いゃあ、それだけは・・・困る」
シュンと項垂れて、ちょこんと座布団に座るお父さん。
その姿は、佳大さんと、アツとソックリで・・・。
流石、親子。
ということは、僕も将来、お母さんみたくなるのかな。
いや、出来たらそれだけは避けたいかな。
「未央、言いたいことがあるんでしょ」
お母さんに言われ、座り直して、背筋をピンと伸ばした。
「こんな僕に、何から何まで・・・本当にありがとうございます。あと、沢山のベビー用品を奏人の為に揃えていただいてありがとうございます。すごく嬉しかったです」
頭を下げられる所まで下げた。
「いいんだ、未央・・・そ、その・・・」
お父さん、なぜかモジモジしていた。
顔を上げると、目で何かを必死に訴えってきた。
あっ‼
そっかぁ‼
思い当たるのは、一つしかない。
肝心なのが、抜けていた。
「・・・お父さん・・・」
途端にお父さんの表情がぱぁっと明るくなった。
なんか、すごくかわいい・・・。
「もう一回頼んでいいか?」
「はい‼お父さん」
催促されもう一回呼ぶと、デレデレの笑顔になった。
「いゃあ、未央にそう呼んで貰えるなんて・・・父さんは果報者だ。むさ苦しい男所帯だけどな、これからも宜しくな」
「はい‼」
元気いっぱい返事すると、お父さん、よほど嬉しかったのか突然泣き出した。
お母さんが呆れながらそんなお父さんを、よしよしって宥めていた。
「今からこれじゃあなぁ・・・」
「奏人が産まれたら、毎日の様に泣くのかよ」
理人お兄さんと、頼人お兄さんも大きな溜め息を吐いていた。
隣に座り込んできたアツが、そっと手を握ってくれた。
「良かったな」
「うん‼」
「その・・・体・・・辛くないか?」
「・・・少し・・・でも大丈夫。ありがとう・・・ねぇ、アツ、これが家族団欒っていうものなの⁉僕んち、こういうのなかったから」
「あぁ、そうだよ。これから毎日、嫌っていうくらい賑やかになるよ」
アツの言葉にワクワクしてきた。
ともだちにシェアしよう!