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別れの朝

理人兄さんの手が、お守りを握る僕の手に重ねられた。 「あ”--!!」 隣でアツが声を上げた。 「篤人、五月蠅いぞ。少し静かにしろ」 「う”・・・」 一喝され、頬っぺたをこれでもかと膨らませるアツ。 拗ねた顔がカワイイ。 「未央、ありがとうな」 「へっ!?僕、何もしていないけど・・・」 「るのあの妊娠が分かって、どうせ育てられないのなら子供を堕ろそうかーーそう、考えた。俺も、るのあも親になるのが不安で、怖くて・・・。そんな時だ、未央が妊娠して、産む決意をしたって聞いて、俺たちも、親になる決意を固めた。俺たちも赤ん坊の親になれる様、頑張るから、未央も、篤人と一緒に奏人の親になれる様頑張れ」 「理人兄さん・・・」 穏やかな笑みを浮かべながら、すっーと手が離れていった。 そしたら、アツの手が伸びて来て、ぎゅっと握り締められた。 彼を顔を見上げると、まだ、ぶすくっていた。 焼きもちを妬いてくれたみたいで、何だか嬉しかった。 「父さん、母さん」 理人兄さんが、お父さんたちに体の向きを変えて、深々と頭を下げた。 「報告が遅くなりすみませんでした。高校を卒業したら、るのあと籍を入れて、一緒に暮らそうと思います。大学には進学せず、就職することにしました。医者になって欲しいというお父さんの期待を裏切って、申し訳ありません」 「貴方なりに考えて決めた事なら、母さんは何も言わない。るのあさんのご両親はなんて?」 「彼女一人っ子で、孫が出来てすごく喜んでいた」 「そう」 お母さんは心から祝福していたけど、お父さんは、がっくりと肩を落としていた。 「佳大も、理人も、未央も・・・みんな、いなくなって・・・父さん、寂しいよ」 「何言ってるんですか!頼人と、篤人がいるじゃないですか。私も、雅枝さんも。それに、未央がこのうちに帰って来るときは、奏人も一緒ですよ」 お父さん、どうやら、『奏人』に弱いみたい。 お母さんの口から名前が出てきた瞬間、目尻が下がりっぱなしになった。 「未央、奏人と帰ってくるの、お父さん、首を長くして待ってるからな」 「はい、お父さん」 「うん、やっぱり、未央にお父さんって呼んで貰えると嬉しいな」 お母さん、デレデレになっているお父さんに苦笑いしていた。 「寺田、ヒーリーさん、未央をどうか守って欲しい」 お母さんが、廊下に控えていた寺田さんと、ヒーリーさんの方に体の向きを代え、深々と頭を下げた。 「寺田、宜しく頼む」 お父さんも、背筋を整えて、頭を下げた。 「旦那様、奥さま、お顔を上げて下さい」 寺田さん、予想外の事に吃驚したみたい。 慌てふためいていた。 「この、寺田、命に代えましても、未央様と奏人様をお守り致します」 「ダイジョウブ」  ヒーリーさんが任せて下さいと、握り拳を作り胸倉をポンポンと叩いた。

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