91 / 120
ただいま‼
「未央様、お辛いでしょうが、大旦那様と奥様の前では、なるべく明るく振る舞って下さい」
「寺田さんありがとう」
「いいえ」
ヒーリーさんに片手を握ってもらい、すぅ~と一つ深呼吸をしてから車を下りた。
「未央ちゃん‼」
「お祖父ちゃん‼お祖母ちゃん‼」
「久しぶりねぇ、元気だった?」
「はい‼」
白衣姿のお祖父ちゃんと、スーツ姿のお祖母ちゃんが出迎えてくれた。
「忙しいのにわざわざすみません」
「いいのよ。気にしないで」
「お祖母ちゃん、お世話になります」
ペコリと頭を下げた。
「みんな待っているから家の中に入ろうね」
「みんなっ・・て!?」
「いいから、いいから」
お祖母ちゃんに急かされ、玄関を開けると、置場所がないくらい靴が並べてあった。
靴を脱いで、広間に向かうと、
「おかえりなさい」
ご近所さんが勢揃いしていて、吃驚した。
「鬼頭先生にひ孫が産まれる、こんなめでたいことはない」
「あぁ、そうだ‼」
男性陣は、お酒がだいぶ入っているようで、みんな赤ら顔だった。
「未央ちゃん、こっちこっち」
女性陣に手招きされ、真ん中にちょこんと座った。
「こんな田舎だけど、ゆっくりしていぐんだぞい」
「妊婦さんには、ほら、鉄分とカルシウムが必要だべ、いっぱいほうれん草と小松菜を持ってきたから、たんと食べて」
「は、はい・・・」
訛りがよく分からなくて、ちんぷんかんぷんになりながらも、みんな、僕を孫のようにに可愛がってくれる事が嬉しかった。
良かった・・・ここに帰ってきて・・・
ともだちにシェアしよう!