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再び忍び寄る影
「未央様!」
血相を変えて寺田さんが駆け込んできた。
「今、取り込み中。見て分らない?」
「見なくても分ります。お二人が仲が宜しいのは・・・そんな、呑気な事を言っている場合じゃ有りませよ。とにかく、急いで車に乗って下さい」
辺りを警戒しながら見回し、何度も背後を確認していた。
「未央をあんまり急かすな。転んだら大変だろう。一体、何があったんだ?」
「車に乗ってからお話しさせて頂きます」
普段は穏やかな寺田さんの、その慌てぶりに、何か大変な事態が起こっているのは安易に予想できた。
お腹が重くて、なかなか思うように早く歩けなくて、やっとの思いで病院の駐車場に辿り着いた時はすっかり息が上がっていた。
「未央、大丈夫か?」
「うん。少しお腹が張るけど・・・じきに、落ち着くから・・・」
後部座席をアツが開けてくれて、誰かいないか、変わった事がないか、入念にチェックしていた。
寺田さんも、車の下や、トランクを開け、かなり入念にチェックをしていた。
「大丈夫そうだ」
アツに体を支えて貰い、先に乗り込んだ。
「このまま、横になるといいよ。俺は前に乗るから」
「うん、ありがとう」
お腹を擦りながら、ゆっくりと横になり、何度か深呼吸を繰り返した。
アツと、寺田さんも乗り込んで、車が静かに走り出した。
最初にある信号機。いつもは曲がるはずなのに、今日は何故か直進した。
「篤人様、未央様、お疲れのところすみませんが、真っ直ぐ、警察に向かいます」
「何で⁉」
「このままですと、未央様の身に三度、危険が及び兼ねないからです」
「たくっ‼どこまで未央を追いつめたら気が済むんだ、あの人は・・・」
アツの声は、怒りに震えていた。
どうしたら、父は、僕を諦めてくれるんだろう。奈津美さんを支えられるの、父しかいないのに。
僕より、未幸を失った彼女を大切にして欲しいのに・・・。
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