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見えない父の影に脅え・・・彼との再会
「お祖父ちゃん‼」
「おぅ、篤人に未央」
警察署の駐車場で、お祖父ちゃんと、呑み仲間のご近所さんと鉢合わせになった。
「1週間前から県外ナンバーの車が、町内をウロウロしててな、昨日、一昨日と、未央の顔写真を持った男が、息子を探しているんだって何軒かの家を訪ねたらしい」
「おれら、知らねぇ振りはしたけどなぁ・・・」
「うだな。今朝は、俺んちの隣の家さ、来たみたいだ」
「だから、周辺のパトロールを強化して欲しいと、町内会の三役のみなさんで、頼みに来たんだ」
「お祖父ちゃん、皆さん、僕のためにすみません・・・」
アツも一緒に頭を下げてくれた。
「いんだ、いんだ」
「うだ。こんな田舎さぁ、二人も若いのが移り住んでくれて、おれらの方こそ、嬉しいんだ。じき、赤ん坊も産まれる事だし。子供は宝だからな、大事にしてやらんとな」
ご近所の皆さん、最初は、女の子だと思っていたみたい。勇気を出して、両性だと告白したら、気色悪いとは一切言わなかった。
よそ者の僕を、自分の孫のように優しくしてくれる。
アツの事だって、温かく迎い入れてくれた。
ほんとに有りがたい。
皆さん、用件を終え、笑顔で帰っていった。
「未央、事情を聞かせて欲しいと、地域課の刑事さんが」
お祖父ちゃんに言われ、そわそわした視線をアツに向けると、
「どう思われようが、ちゃんと正直に話しをしたらいい」
そう元気付けられ、
「そうだ。未央は、なんら悪いことはしていないんだから、堂々としていればいいんだよ」
お祖父ちゃんにも背中を押して貰い、ドキドキしながら、人生初の警察署の中に足を踏み入れた。
出迎えしてくれたのは、二人の若い婦警さん。最初、目をパチパチして、かなり驚いていたみたいだけど、親身になって、僕の話しを最後まで聞いてくれた。
見えない父の影に脅えないといけない日々がまた来ようとは・・・。
身重の僕に出来るのは、母として奏人を護る事、ただそれだけ。
アツの指をそっと握ると、力強く、握り返された。
「大丈夫、心配するな」
わざと明るく振る舞ってくれた。
アツ、ありがとう・・・。
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