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見えない父の影に怯える日・・・彼との再会
見えない父の影に怯え、突き刺さるような、あの冷たい視線をいつも感じる毎日。何時姿を現すか分からない恐怖に、身も心も、限界まで追い詰められていた。
「未央、顔が真っ青だ、本当に大丈夫か?」
頭がぼぉーとしてて、心配してくれるアツの言葉も殆ど耳に入らなかった。
「大丈夫な訳ないでしょう。夜、全然寝れないんだもの。日中だって、うとうとし始まる頃を狙ったかのように、チャイムを鳴らし続けられて、それで目が覚めて、結局一睡も出来ないんだもの。警察もパトロールを強化してくれているけど」
「未央の事は、お祖父ちゃんたちに任せて、学校に行け」
「あぁ・・・分かった」
アツの手が髪にそっと触れてきた。
「ごめんね、ちゃんと見送らないといけないの、分かっているんだけど、体がいうことを聞いてくれないんだ」
全身鉛の様に重く、そして怠くて、布団から起き上がることも出来ず、アツを見上げることしか出来ない自分が情けなかった。
ここ三日、お祖母ちゃんは、お仕事を休んで、僕に掛かりきで、面倒を見てくれている。
寺田さんも、ヒーリーさんも、殆んど寝ずに、僕を守るため、疲れも見せず一生懸命尽くしてくれている。
「俺の事はいいから・・・ゆっくり休んだらいい」
「うん、ありがとう」
アツ、何度も振り返りながら、お祖父ちゃんと一緒に出掛けていった。
でも、1分と掛からず血相を変えて戻ってきた。
「どうしたの?」
驚くお祖母ちゃんの耳に、小声で何かを伝えると、寺田さんとヒーリーさんを連れて、大急ぎで、また、玄関に向かっていった。
「お祖母ちゃん?」
「未央ちゃんは知らないほうがいいかも。お腹の子に障るから」
「でも・・・」
「ほら、今のうち、少しでも寝なさい」
お祖母ちゃんが、布団を掛け直してくれた。
気にはなったけど、これ以上、迷惑を掛けるのも申し訳なくて。
結局、聞けなかった。
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