103 / 120
”故郷”へ
「奏人は早起きさんだな」
お腹を擦っていた佳大さんが嬉しそうに微笑んだ。
「人んちの子に気安く触らないでくれるかな」
不満を露にして、アツも負けじとお腹を擦る。
「あらら、貴方たち・・・本当に仲がいいのね」
朝っぱらから騒ぐ二人に、様子を見に来てくれたお祖母ちゃんも呆れていた。
「佳大、何時にここを出るの?」
「7時に、乾先生が迎えに来ることになっている」
「なら、あと、30分もないじゃない。ねぇ、佳大。未央ちゃんとアツ、二人きりにしてあげない?しばらくの間、離れ離れになるんだし・・・」
「お祖母ちゃんがそういうなら・・・仕方ないか・・・」
佳大さんがむくっと体を起こした。
視界に、褐色の逞しい肩甲骨と臀部が飛び込んで来た。
「なっ、なんで、裸なの!」
「何を今更恥ずかしがっている。何度も、見ただろう?」
これ以上は禁句!アツの前ではだめ!
慌てて、佳大さんの口を押えようとしたら、アツも裸だとようやく気が付いた。
「アツは昔からお兄ちゃんの真似ばかりしてたものね」
わたわたと動揺する僕とは正反対に、お祖母ちゃんはドンと落ち着いていた。
流石だ。
「シャワーでも浴びてくるか」
着替えを手に佳大さんが部屋を出て行って、お祖母ちゃんもそっといなくなった。
「未央・・・これは・・・その・・・朝の生理現象だから・・・」
おたおたしながら、ぎゅっとアツが肩を抱き締めてくれた。
「すぐ、後を追うから待ってて・・・奏人もパパが行くまで待ってて・・・」
真面目な顔で面白いことを言うから、思わず笑ってしまった。
ともだちにシェアしよう!