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奏人とはじまる新しい生活

なおも追い縋ろうとする父から逃げ、日本を離れて一か月半あまり。 ガーランドは丁度雨季の終り頃。月半分は雨だけど、日中の平均気温は三十三度。夜でも、二十三度と、日本と比べるとやはり、蒸し暑い。 「ただいま、未央」 夕方になり、アツがドタバタと高校から帰ってきた。インターナショナル校は、中学校しかなく、やむを得ず、現地の高校へ中途編入した。 アツの英語力ならなんとかなる‼ って佳大さん。 弱音も吐かず、毎日、分厚い英語の辞書を片手に勉強を頑張っている。 何よりも、アツの頑張る原動力になっているのは、僕の隣で、バンザイの格好で、スヤスヤと眠る奏人の存在が大きいみたい。 予定日より、一か月早く産まれた奏人。乾先生も驚くくらいの安産だった。 そして一番気掛かりだったこと。 両性かも・・・って、心配したけど、 良かった。普通の男の子で・・・。 「奏人、起こさないでよ」 「えぇーー‼抱っこしようと思って、急いで帰ってきたのに」 「起きてからでもいいでしょう」 ぷにぷにのやわらかな頬っぺたをツンツンとするアツ。自然と笑みが溢れる。 そして、奏人を溺愛して止まないのがもう一人。 ネクタイを緩めながら、大急ぎで帰宅してきたこの家の主である佳大さんだ。 「奏人ただいま~」 部屋に入るなり、アツに、しーーぃと言われ、少しブスくっていたけど、奏人の寝顔を見た途端、デレデレの笑顔になった。 今、僕は、ある決断を二人から迫られている。

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