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愛する二人と紡ぐ未来(半年後)

「う~、寒い。こんなに、寒かったっけ?」 「仕方ないよ。亜熱帯の国にいたんだから」 あれから半年後ーー。 お正月にみんなで一時帰国した。 アツの背中におんぶされた奏人は、手足をパタパタ動かし、元気いっぱい。 「未央、大丈夫か⁉荷物は、俺が持つから・・・足元、気を付けて」 「うん、ありがとう」 佳大さん、ここ最近、怖いくらい優しい。 「未央、お帰り‼」 ゲートを出ると、お母さんとお父さんが笑顔で出迎えてくれた。 お父さんは、奏人に会いたくてしょうがなかったみたい。 子供みたいにはしゃいで、アツと、佳大さんに飽きられていた。 「抱っこしていいのか?」 「父さんの孫だよ。当たり前だろ」 背中から奏人を下ろすと、お父さん、待ってました‼とばかりに、腕に抱いてくれた。 「初めまして、じいじだよ。アツの赤ちゃんの頃にそっくりだ」 「だって、俺の子だもの」 あーうー。ご機嫌よくお話しする奏人に、お父さんたち、デレデレの笑顔になっていた。流石、親子。そっくり。 思わず噴き出しそうになった。 「未央、聞いたよ、双子なんだって?おめでとう」 「ありがとうございます」 今、僕のお腹には、アツと、佳大さんとの赤ちゃんが宿っている。 妊娠が判明して、乾先生に、二人とも耳を引っ張られ、待合室で延々と説教をされてた。 年子でしかも、双子。 なんで、避妊しないかなって・・・。 アツも、佳大さんも、しゅんと項垂れるのかと思って見てたら、 「俺たちも四人兄弟だったから、奏人に、早く、兄弟を作ってあげたかったんです。次こそ、ちゃんと話し合って決めます。すみませんでした」 堂々とした態度で、先生に謝っていた。 「今度こそは、お祖父ちゃんたちの所で産みたい。ダメですか?」 「いいんじゃないの。あなたの好きにすればいいわ」 「お母さん、その・・・父と、奈津美さんの事、ありがとうございました‼」 頭を深々と下げた。 あのあと、奈津美さんは警察に保護され、自立支援施設で、社会復帰に向けリハビリをしている。 父は、逮捕されるも、すぐに釈放され、そのまま、精神病院に入院した。 あれほど散々迷惑を掛けたのに、お父さんも、お母さんも、父と奈津美さんを気にかけてくれて、何度も面会に行ってくれているみたいだった。 「生きていれば、いつか、会える日がくると思うよ。二人がしたことは決して許されるべき事じゃないけど、未央も、親になったんだし、今なら中澤さんの気持ち、少しは理解出来るんじゃないかなって思う」 お母さんの話を、何度も頷いて聞いていた。 「母さん、未央を泣かせるなよ」 「泣かせてないから」 アツと、佳大さんが僕にぴたりと寄り添ってくれた。 「初めまして奏人」 渋るお父さんの腕から、ムリムリ奏人を抱き上げるお母さん。 「返してくれ」 「私にとっても、大事な孫ですから。一人占めは許しません」 「そんなぁ・・・」 「さぁ、奏人、うちに帰ろうね。るあが待ってるよ」 理人兄さんにも、無事、女の子が産まれた。 鬼頭家、始まって以来の女の子の誕生に、みんな吃驚したみたい。 産まれる直前まで、男の子って云われてたのに、産まれてみたら女の子だったから、尚更。 「未央、女の子も可愛いよ」 「女の子⁉ん⁉なんの話しをしているんだ・・・もしかして、未央、二人目が出来たのか?」 「あら、言ってませんでした?未央、双子を妊娠したんですよ」 「・・・」 お父さん、状況を飲み込めなかったのか、しばらくの間、ぽかーんとしてた。 そのあと、飛び上がるくらい大喜びしたのはいうまでもない。 「未央」 アツと、佳大さんが手をそっと握ってくれた。 二人の顔を交互に見上げると、にっこりと微笑んでくれた。 愛する二人と、奏人と、まだ見ぬ我が子と、紡ぐ未来は、きっと、キラキラ耀いている。 両性に産まれて、良かった。 今、心からそう思う。 みにくいアヒルの子は、幸せです。 《完》

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