111 / 120

番外編 《洗礼式と新居編》

奏人が産まれて2カ月余り。 朝から晩まで、初めての育児に悪戦苦闘してる。 こんなにも子育てが大変だとは思いもしなかった。 昼夜逆転している奏人。日中は殆どねんねしている事が多いけど、夕方から本領発揮。全く寝てくれない。 幸いにも、二人のパパが育児に積極的で、疲れているのにも関わらず、嫌な顔一つせず子守りを引き受けてくれるから、ほんと助かっている。 そんなある日の事。 国王陛下の使者の方が、うちを訪ねてきた。 周囲に規制線が張られ、階段に金色の鮮やかな刺繍を施した豪華な赤絨毯が敷かれ、マンション中が大騒ぎになった。 『明日、ご子息の洗礼式を王宮内の礼拝の間で執り行います』 「受け賜りました」 佳大さん、あらかじめ知っていたのか、さほど驚いていなかった。 恭しく頭を下げると、親書を受け取った。 近隣諸国がイスラム教を信仰するなか、ガーランド王国は、植民地支配の影響が色濃く残り、キリスト教を殆どの国民が信仰していた。 奏人は、両親ともに日本人だけど、ガーランド国民として生を受けた。 慣例にのっとり、いずれ、近くの教会で洗礼を受けなければならないって佳大さん話していたけど、まさか、国王様自らお招きになられるとは思わなくて、ビックリした。 「僕、スーツとかないよ」 「未央とアツは普段着で大丈夫。それより・・・」 使者の方を一階まで見送り、エレベーターに乗り込むと、すぐ後ろからハグされ、口付けをねだられた。 二人を夫にすると、決めたものの、エッチはまだしてない。そういう雰囲気になりかけた時は勿論あるけど、そういうときは決まって奏人が機嫌が悪くて、あやしているうち、しようという気が萎えてしまう。 「・・・ふぅ・・・ん」 思わず、鼻から息が抜けるようなため息が漏れた。 以前は彼に触れられるのも嫌だったのに・・・。 互いの思いが通じ合った今、彼との口付けは蕩けそうになるくらい甘い。 名残惜しそうに彼の口唇が離れ、思わず、腕にしがみついた。 「佳大さん・・・ごめんなさい・・・その・・・」 「奏人がもう少し大きくなれば、出来るようになるよ。今は、奏人を優先してやれ。俺もアツも、順番が回ってくるまで待ってるから。気にするな」 「うん、ありがとう」 佳大さん、人が変わったように、すごく優しくしてくれる。 血の繋がらない奏人を、目にいれても痛くないくらい溺愛してくれる。 オムツ交換は、僕より上手だし、あやしかたもすごく上手。 絵にかいたようなイクメン。 勿論、アツも、ちゃんとパパしてくれている。 「こうして、未央が俺を愛してくれる。必要としてくれている。それだけで、充分幸せだ」 佳大さんの言葉が、涙が出るくらい嬉しかった。

ともだちにシェアしよう!