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番外編《洗礼式と新居編》

案内された礼拝の間には、左右にずらりと、司祭様をはじめ、王公貴族が並び、中央の玉座に、アショクラ国王と、3人のお妃さま方がそれぞれ座っていた。 ディネシュさんは、少し離れた所に立っていた。 『ヨシト‼』 国王様は、お父さんくらいの年齢かな⁉ お妃さま方は、みな、若くて綺麗な人ばかり。 佳大さんの姿を見付け、にこやかな表情で、駆け寄って下さった。 国王様は、佳大さんの事ををディネシュさんの弟と呼んでいた。 「妻の未央と、弟の篤人と、息子の奏人です」 『孫を抱かせてくれるか?』 「はい、勿論です」 会話についていけず、きょとんてしていたら、奏人、いつの間にか、国王様に抱っこされていた。 まだ、熟睡してて、この状況でも、全く起きる気配を見せない。 そんな胆が座って度胸のいい奏人に、国王様は、驚かれ、ラクシュマン(めでたい兆しをもつもの)の名前を授けて下さった。 そのあと執り行われた洗礼式で、司祭様に、聖水を顔や体に撫でるように掛けて貰った。 流石の奏人もビックリしたのか、寝てもいられず目を覚ました。 これだけの大勢の人に見られ、厳かな雰囲気に、ギャン泣きするのかと思えば、真ん丸い目をパチクリさせて、司祭様の指を掴まえ、キァ~キァ~と声をあげて笑いだした。 参列者のみなさん、そんな奏人に癒されたのか、張り詰めていた場の雰囲気が和やかなものに変わった。 誰もが、ニッコリ。 司祭様が、何かを高らかに宣言され、僕以外、みんな度肝を抜かれていた。 アツと、佳大さんもかなりビックリしたのか、ポカーンとしていた。 落ち着いた頃を見計らって聞いたら、 「神様が、司祭様に、『いずれ、この者が、この国の民を助け、導く存在になるだろう。ガーランドの王になるだろう』そう、お告げをしたらしいよ」 そう二人に言われ、腰を抜かすほどビックリしてしまった。 「あり得ない話しでもない。いつまでも、王政が続くとも限らないし」 ディネシュさんにもそんな事を言われて、奏人の顔を覗き込むと、ニコニコの笑顔で返してくれた。 王様には沢山のお子さんがいる。 だから、何かの間違いだよ・・・。 きっと冗談だよ。 そう軽く流したけど、30年後、それが現実になるとは・・・。 洗礼式が無事終わり、王様を囲んで、豪華な晩餐会が始まった。 主賓は、勿論奏人。 でも、当の本人は、至ってマイペース。 キョロキョロ辺りを見渡して笑ったり、二人のパパに抱っこをせがんだり、寝たいときに寝ていた。 『ラクシュマンは、ねんねですか?』 ジェイ殿下は、僕を気遣ってか、何度も優しく声を掛けてくれた。

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