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第104話 霧咲の思惑
「暁哉、ナカに出すよっ……!」
「やああ、誠人さっ……あっ……!!」
霧咲が榛名のナカに射精すると同時に、榛名もまた同じタイミングで射精した。というか、ずっと緩やかに射精していたのだが。
霧咲は榛名をきつく抱きしめたまま、呼吸を整え始めた。
「はぁ、はぁ……きみ、あんなに大声を出して近所の人に警察呼ばれたいの?」
わざと少し呆れたような声を出す霧咲に対し、榛名はふふっと笑った。
「それでここを追い出されたら、俺はもう明日にでも貴方の家に行かなければいけませんね」
「なんだ、気付いてたの?」
「当たり前です……」
最初から気付いていたわけではないのだが。
すると霧咲は、子供のようにギューッと榛名に抱きついてきた。抱きしめるのではなく、抱きつく、だ。霧咲の方が背が高いので、子供に……というよりは何か大きな動物にまとわりつかれているような感覚だった。
「誠人さん?ちょっと、苦しいです」
「君にはどんどん敵わなくなっていきそうだ……」
「え?」
もういちど苦しい、と言ったら少し腕の力が弱まった。しかし榛名はまた霧咲の言っていることの意味が分からなくて、軽く首を捻った。
「俺の尻に敷かれるってことですか?」
「それはもう、既に敷かれてるだろう」
「どこが!よくそんなこと言えますね」
榛名は信じられない、という顔で霧咲を睨む。霧咲はそんな榛名を悪戯っ子のような顔で見つめ返した。
「悪い口だろう?今度は君がお仕置きしてくれよ」
「しょうがないですね……」
そしてふたりは玄関で、また熱いキスを交わした。二人はそのまま支え合いもつれるようにして、寝室へと移動した。
「あ……あの、もう一度風呂に入った方が…」
「どうせまた汚れる。服を脱いで?」
「は……はい」
玄関の明かりのみで照らされている薄暗い部屋の中で、榛名は言われた通りに着ている服――もう既に半裸だったが――を脱いでいく。霧咲も同様に、榛名に背を向けて服を脱いでいた。
数時間空けていたので、寝室の中は少しだけ寒い。榛名は霧咲の背中に後ろからぎゅっと抱きついた。霧咲は少し目を丸くして榛名を見たが、すぐに笑って。
「……明日は、一緒に玄関を掃除しようね」
「はい」
優しくそう言って、腹に回された榛名の手をそっと外すと向き合い、自然に目を閉じた榛名にキスをした。そのまま抱きしめてどさり、と二人いっぺんに榛名のシングルベッドにダイブする。男二人で横になると普通に狭くて寝苦しいのだが、この狭さが今の二人にとっては嬉しいのだった。
「ここなら、どんなに大きな声を出しても構わないよ」
「……やっぱりさっきは声、隣とかに聞こえてたでしょうか」
「それは、そうじゃない?」
霧咲は、榛名の額にちゅ、と軽くキスをした。それはわざとらしいが、少し慰めているようでもある。
「誰にも会わない内に引っ越さなきゃ……」
「そうだね、早く俺のところにおいで。毎日君を抱きしめて寝たいよ」
玄関先で求めたのは榛名だが、そうさせたのは霧咲だ。本当にヤバいと気付いていたのなら、止めることだってできたのに。
「もう……調子いいんだから」
「俺は君のお願いを聞いてあげただけだよ?」
「……分かってますよ」
そして二人はまたどちらともなくキスを交わし、朝まで熱く愛し合ったのだった。
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