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第133話 堂島、二宮に襲われる
案の定、寝転がった堂島の上に二宮が乗ってきた。まさかあんな動画を見たからと言ってノンケの二宮がいきなり襲ってくるワケがない。きっと自分を脅かしてお仕置しようとしているのだ……と堂島は思った。
二宮は榛名のことが凄く気に入っているし、自分が気付いてないだけで恋愛的にも惹かれているんじゃないかと、榛名を嫁にしたい発言を聞いて堂島は思った。そして、その直感は案外間違ってないような気がするのだ。
「お前、榛名さんのケツ掘って気持ちよくさせるってからには、自分でも試したンだろーな?ぁ?」
「え、何をッスか?」
「決まってんだろ、ケツ穴……アナルセックスだよ」
下から見上げる二宮の顔からは、普段の寡黙さや物静かで優しい雰囲気はガラリと消え失せていた。堂島の足の間に身体を入れて、両手を押さえつけている。
身長もガタイも同じくらいなのに、力は二宮の方が遥かに強かった。日々、ステアリング操作で鍛えている賜物だろう。そして、堂島はあまりに絶望的なこの状況に、とっくに酔いは醒めていた。
「や、試したことないっす。え、男抱くってことですよね?俺は榛名くんなら抱けそうなんであって、二宮先輩のことはちょっと」
「バァ~カ。なんで俺がお前に抱かれなきゃいけねぇんだよ。逆だ、逆。ケツにチンコ突っ込まれたことはあんのかって聞いてんだよ」
「い、いや、それもないっす」
(コワイ ……)
二宮の友人がウイスキーを禁止した理由が分かった。そして堂島は、自分がこんな状況に陥って初めてあの時榛名がどんな気持ちだったのかを理解することができた。なのでこの時に初めて心から反省したのだった。
「ふうん」
「な、なんすか?」
「堂島お前さ、意外とカワイイ顔してねぇ?」
「はい?」
今度は一体何を言い出すのだろうか、この酒癖の悪い先輩は。『可愛い』なんて、初めて……いや、幼少期の頃はよく言われていた。が、成長するにつれてその言葉は『昔は可愛かったのに』というものに変わった。
堂島は物凄いイケメンではないが、そんなに悪くもないと自分では思っている。
榛名のように、異性からも同性からも『可愛い』と思われるようなほのぼのした部類の顔ではないのは確実だ。二宮は、目を据わらせたまま堂島にニヤリと笑いかけた。
「すげぇ泣かせたくなるわ」
「は?」
(な……泣かせたい?俺を??)
「なァ堂島。俺がお前に試してやるよ、その女なんて目じゃねぇくらい気持ちいいっていう、セックスをよ」
「は、はいぃ!?何言って!」
何言ってんだアンタ、と堂島が言うよりも早く、二宮の手が堂島のデニムパンツに掛けられた。
「オラ、とっとと脱げ!下だけでいいから」
「うわぁ!」
下着にまで同時に手を掛けられ、一気に引きずり降ろされそうになり堂島は必死で抵抗した。頼みの綱であるベルトは呑む前に軽く緩めていたため、全く役目は果たしていない。
「おい、抵抗してんじゃねーよ、脱げって」
「二宮先輩、冗談きついっす!!やめてくださいマジで!本気で!後悔しますよ!!」
「お前だって榛名さんに同じことしようとしてたんだろーが。ならまずは自分が甘んじて受けろよ」
「ご、ごめんなさい二度としませんし榛名くんにはプライベートじゃ近づきませんからァ!!お願いだから許してください!!」
どうも、堂島のカミングアウトに対して二宮は相当怒っていたらしい。二宮だって榛名のことが好きすきじゃないか。自分よりも、かなりのレベルで……と堂島は思った。
「俺が許す許さねーじゃねーんだって。試してみようっつってんだよ、な?あの動画の男もすっげー気持ちよさそうにアンアン喘いでただろ、お前もあんな風に鳴いてみろよ。っつか、泣かす」
「え、えええええ!?」
「おら、隙あり!」
「きゃああーッ!」
二宮のとんでもない提案を聞いていたら、いつの間にか下着ごと服をはぎ取られていた。下半身が、二宮の前にモロに晒される。デニムは膝のあたりまで下ろされ丁度枷のようになり、ますます身動きが取れなくなった。
上はコートを脱いでロンT一枚だったので、がばっと捲られて堂島はあっという間に鎖骨の下から膝までの身ぐるみを剥がされたのだった。
「きゃあってお前、女かよ」
「二宮先輩マジでやめてくださいってばァ!!冗談きついです!!俺は男っすよ!ヤローっすよ!榛名くんじゃねぇっすよ!!」
「当たり前だろ、俺が榛名さんにこんなことするかよ」
「え」
それは一体、どういう意味なのだろう。榛名にはこんなことをしたいとは思わないという意味なのか。それとも、榛名にはこんなひどいことはしないけど、自分ならばいいという意味なのか。
なんだか少し、胸がチクンとした。たとえ理由が後者だとしても、自分には傷つく資格なんてありはしないのに。全く同じようなことを、榛名にしようと思っていたのだから。
「あー……でもやっぱアレだな、お前胸ねぇし俺と同じモン付いてっし、視覚的に萎えるわ」
「そりゃあそうでしょうとも。分かったら退 いてくださいよ」
堂島は、二宮が自分の裸を見て冷静になったのかと思った。しかし、二宮は堂島の上から退かず、いきなり部屋の照明を真っ暗一歩手前――常夜灯の状態にした。
「え?」
「これならちょっとはマシだろ?」
(ちょっと待て。続ける気か?この人)
行為をやめるどころか、逆にムーディーな空気までができてしまった。その上アルコールが入ってるせいなのか、自分の気持ちとは裏腹になんだかドキドキまでしてくる始末だ。
違う、いけない、こんなの間違ってる。
「お前もさぁ、あんなの見るくれぇなんだからちったぁ興味あんだろ?」
「!」
耳元で、核心を突かれてしまった。息を吹き込まれて思わず心臓がドキンと跳ねる。
「新しい世界が開けるかもしんねぇぞ?」
「いやっあんまり開きたくはないっす……それに俺は突っ込みたい側で」
「だーかーらー榛名さんは無理だって。つーかお前が襲おうとした時点でもう既に霧咲先生にハメられた後に決まってんだろ、お前のチンコが入る隙はねぇよ。突っ込んだところで東京湾に沈められっぞ」
「へぁ!?」
(なんだって?榛名くんと霧咲先生がくっついたのはあの後じゃなくて、もう既にくっついた後だった?)
自分の道化っぷりを自覚した堂島はカアアッと赤くなった。
(なんだそれ……俺、結局あの二人のラブラブの手伝いしただけかよ!?)
あと何故東京湾なのか疑問だったが、確かに霧咲ならやりかねない。
「だからお前はアレだ、おとなしく俺にぶちこまれとけよ」
「だからなんっでそーなるんッスかぁ!」
「あーもううるっせぇな、ムードねぇからもう黙れ!」
「ンンッ!?」
堂島は口を無理矢理塞がれるように、唇を強く押し付けられた。
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