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第154話 その言葉で、不安が薄れていく

「あっあっ、んぁっ、あっ!」 榛名のナカを何度も穿つ霧咲の動きも、なんだかいつもより激しいように感じる。自分と同じように霧咲も興奮してくれているのがダイレクトに伝わってきて、榛名は嬉しくなった。 (共有するのは、こういうのだけでいい) 今まで何度も霧咲の前で泣いたり、弱音を吐いたりしてきた。 でもいい加減に自分で処理できるくらいに強くならないと、家族になるなんて――子供を育てていくなんて無理だろう、と思うのだ。 霧咲が自分に弱い部分を見せてくれるのは嬉しい。それは珍しいのと、頼りにされているのが分かって嬉しいからだ。 でも霧咲の方は、榛名と同じように思ってくれているのだろうか。 もしかしたら、すぐに落ち込む自分を少しうっとおしく感じているかもしれない。 霧咲の昔の恋人は、きっと自分の弱いところは霧咲には一切見せなかったはずだ。霧咲が彼のそういう部分に惹かれたのだと思うと、余計に情けないところは見せたくない。 あいつとは全然違うんだ、と言われていても……。 (あぁ……) セックスの最中にこんなことまで思い出すなんて馬鹿みたいだ。自分は一体、何に不安がっているんだろう。 榛名はだんだん分からなくなってきた。 その時だ。 「暁哉……」 不意に、霧咲が榛名の名を呼んだ。それも、ひどく優しい声で。 「あ……っ何、ですか?」 そして、何を言うかと思えば。 「好きだよ……誰よりも、君を愛してる」 「っ……!」 なんてことない、いつもと同じ愛を囁く甘い言葉だった。 「なっ……で、そんな!ひぁっ、あんっ!」 「なんでって、いつも言ってるだろ?」 霧咲は、いつも情事の最中に愛を囁いてくれる。どんなに意地悪をしても、最後には甘い言葉で榛名の耳を溶かしてくれる。 だから、これはいつものこと。なのに榛名の心臓はギュウッと締め付けられて、思わずぽろりと涙を零した。 「ねぇ暁哉、君からも聞かせてくれないか」 「っあ……好き、ですっ」 「もっと」 「愛してる……っ誠人さんのこと、誰よりも好きで……頭がおかしくなりそうっ!」 「いいよ、おかしくなっても……可愛いね」 榛名は涙ながらにそう言って、ますます霧咲のモノを強く締め付ける。 霧咲が自分の中から出て行くたびに引き留めて、また奥まで深く受け入れることを繰り返した。 「はぁッ!あっぁあっ!きもちい、あんっ、も、イクッ!」 気持ち良すぎて、だんだんと目の前がチカチカしてきた。視界がブレるのは溢れ出る涙のせいだけじゃない。 「いいよ暁哉、イって」 「ンンっ!」 いきなり後ろから抱き起こされて、手が浴槽から離れた。二つの身体はますます密着して、霧咲は榛名の耳に舌を差し入れながら同時に榛名のモノも刺激した。 グチュグチュという音で耳も同時に犯されて、直接脳が愛撫されているような気分だ。 「あぁッ、ひあぁっ、アアーッ!!」 そんなことをされたら、もう成す術がない。榛名は今まで耐えていたのが嘘のように簡単にイかされて、精液を前方に飛ばした。 「んッ……!」 榛名の強い締め付けにより、霧咲も榛名のナカに直接精液を注ぎ込んだ。 (誠人さんの精子、すごく熱い……) 自分のナカでほとばしる霧咲の体液を恍惚な表情で感じながら、榛名はそっと目を閉じた。 さっきまで心の中で渦巻いていた得体の知れない不安が、少しずつ薄れていくのを感じた。 それから二人は、制限時間の10分前までゆっくり湯に浸かっていた。ゆっくりと言っても、もうほとんど時間は残っていなかったのだが。 * 「大丈夫?君がエロすぎるからついつい激しくしてしまったじゃないか……腰、痛くない?」 霧咲は後ろから榛名を抱きしめて、腰を優しく擦っていた。その手の動きに下心のようなものは感じない。 「ふふ、大丈夫ですよ。それより、せっかくの貸切なのにすみません。誠人さん、頭も身体も洗えてないし……」 「そんなの大浴場でゆっくり洗えばいい。それにしても君があんなに積極的に自分から俺に迫ってくれるなんてね。旅行ってしてみるもんだね、これから月1くらいでどこか行く?」 「いや…そこまで頻回に行くのはちょっと……一般家庭にあるまじき行為というか……」  家計に余裕がないわけではないが(むしろ実現は普通に可能だろう)月に一回家族旅行に行くなど、そんな余裕のある環境で育っていない榛名には抵抗があった。霧咲の実家も、やはり金持ちだったのだろうか。 普段よりも積極的になったことについては、事実なので否定しない。 「じゃあ三か月に一回くらいならいい?」 「そうですねぇ。それかまあ、日帰りなら月1でもアリじゃないですか。亜衣乃ちゃんも色々行きたいところがあるでしょうしね。また遊園地でも、動物園でも」 前に、遊園地ではしゃいでた亜衣乃は可愛かった。今日も沢山写真を撮ったので、データを別に移して保管していないとスマホの容量を超えてしまうかもしれない。家に帰ったら早速その作業をしよう、と思った。 「俺とはそれなりに出掛けてるけど、亜衣乃は君と行きたがるだろうしね」 「そうですかね?」 「そうだよ。既に俺より君に懐いてるじゃないか。ちょっと二人にしただけであんなに仲良くなるなんて、姪相手に嫉妬してるよ」 少しつまらなそうに言う霧咲に、くすっと笑いが漏れる。霧咲は亜衣乃に嫉妬しているようだが、榛名に嫉妬しているようにも思えるし、むしろそっちの方が大きいのだろう。 亜衣乃が霧咲より自分に懐くことは無いと思うが、そうなったら嬉しいな、と榛名は思った。 「って、日帰り旅行だったらエロい君が見れないじゃないか」 「え、そこ食いつきます?」 「そりゃあ、俺の目的は旅行というか君だしね」 「はは……それはなんというか、嬉しいけど複雑ですね……」 思いっきり身体が目的だと言われているのに、それを嫌とも思わない辺りが榛名も重症だ。 「じゃあそろそろ出ようか、大浴場でゆっくりしよう」 「はい。まあゆっくりと言っても30分くらいでしょうか。亜衣乃ちゃんをあんまり一人にさせるわけにはいかないですしね」 「あの子は大丈夫だと思うけど……」 「?」 榛名は先程の行為のせいで少しフラついていたが、霧咲に労わられながら体を拭いて浴衣に着替え、今度は大浴場へと向かった。

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