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第168話 堂島、再び墓穴を掘る

二宮が今日の面子に挨拶に行った時、テーブルからはものすごい歓声が上がった。 二宮がレアキャラなのもあるが、それよりも酒の入った山本の浮かれようが凄かった。 「キャー!二宮さんこんばんはっ、あ、隣どうぞ!!座って下さい!!」 山本は急いで隣に置いてある自分の荷物を退かして二宮の座る場所を作ろうとしたのだが、二宮はそれをやんわりと制した。 「いえ、もう出るところだと聞いたので、とりあえず挨拶だけ先に来ました。俺は入口んとこで皆さん出てくるのを待ってますんで、ごゆっくり」 「じゃあみんな急いで急いで!会計は割り勘よ~~!あっ、たくさん飲んだ意識がある人は1000円くらい多めに出してもいいわよ!」 山本の言葉に、所々ではーい、という声が上がる。同じ病院のスタッフ同士だからなのか、男に多く払わせようとしないところは山本に好感を持った二宮だった。 もっとも二宮は堂島と違って、仕事の業務連絡以外で山本に関わることがほとんどないため、その人物像は噂で聞いたことしかないのだが。(それもかなりぼんやりとしたものだ) なので最初に話しかけられたときも、『あまり話したことのない俺をこんなに歓迎してくれるなんて、この人すげーいい人だな』としか思っていない。 合コンに誘われてから数日経っているからか、または先程まで仕事が忙しかったからか、堂島を通して自分が山本に合コンに誘われた、ということはすっかり忘れている二宮だった。 * カラオケボックスに移動して、みんながドリンクを頼む中、二宮はひとりパスタやたこ焼きなんかを頼んでいた。 もちろん、唐揚げやポテトなど全員が摘めそうなものもついでに頼む。 先程まで追われていた仕事の話をして、全員から『お疲れ様です!』と労われてなんとなく二宮はご機嫌だった。ただ、二宮のそれが分かる者は少ないだろう。 二宮の右には堂島、左には山本が座っている。堂島の隣に座ったのは二宮自らで、他に自分から積極的に話せる知り合いが居なかったためである。早速、隣の堂島に話しかけた。 「さっきまで何の話で盛り上がってたんだ?」 「えーと、先生たちの悪口とかっス」 「なるほど」 「うふふっ、やっぱりみんな顔見知りだからか合コンというより普通の飲み会になってるんです~!全く色気なし!」 隣から山本が会話に混ざってきた。彼女の合コンはここからがスタートらしい。 「まあ、当然そうなりますよね」 「二宮さん、普段カラオケとか行きますか?」 「誘われれば。透析室の歓送迎会の二次会はいつもカラオケですし、行くっつってもその時だけですね。俺はほとんど聞き役ですけど」 「ええ、じゃあ今日は是非歌ってください!」 「……流行りの歌とか知りませんよ?」 「そんなの私もです!」 「じゃあ、飯食べたあとにでも……」 山本は二宮が来てからテンションがMAXだし、二宮もなんだか妙に機嫌がいい。 堂島は少しムッとしてしまったが、とりあえず今は盛り上げ役に徹することにした。 ナース達が若いせいか、カラオケは流行りの曲で大いに盛り上がっていた。ほとんどが定番のアイドルソングで可愛らしく、男性陣も実に楽しそうである。 二宮はいつものポーカーフェイスでそんな彼らを眺めつつ、山本の話を流して聞きつつ、酒を飲みながら目の前の食事を片付けていった。 すると、隣の堂島が気が付いたように言った。 「二宮先輩、たこ焼き1個下さい」 「え?食べたいんだったらもう一つ頼めばいいんじゃねぇか?」 「1個でいいんですよ~。別に腹いっぱいなんだけど、先輩が食べてるの見たら食べたくなって……」 「ふーん、じゃあ、はい」 「え、むぐっ」 二宮は、自分が使っていた箸をそのまま使い、堂島の口にたこ焼きを突っ込んだ。 すぐに爪楊枝が見つからなかったとはいえ、その行動には見ていた全員が驚いた。 「ちょっ、そこの2人!!何男同士でイチャついてんだよ!」 「透析室、ホモ率高ぇなオイ!」 案の定なツッコミが男性陣から入る。堂島は図星を突かれてギョッとしたが(ちなみに、透析室の男性スタッフはまだ他にも数名存在する)二宮は冷静だった。 「や、コイツがたこ焼き欲しがったから。爪楊枝取って貰うより突っ込んだ方が早いかなって」 「効率の問題か!」 「さすが二宮くん!」 「んもぉ二宮先輩!誤解を招くような行動は止してくださいですぅ~」 また有坂風に言いながら、堂島はわざと二宮の鎖骨辺りにピトッとくっ付いた。 こういう場合、茶化して突き詰めた方が信憑性が薄くなるからだ。 でももし榛名が霧咲に同じことをしたらシャレにならないだろうな、と思った。 「ちょっとぉー!またライバルが男とかシャレにならないんだけどぉー!!」 「また?」 (ゲッ!!) もう皆忘れたかと思ったのに、意外とさっきの榛名ネタは尾を引いていたらしい。しかもそれには二宮も食いついた。 「さっきって?」 「え~?実はわたし、前は霧咲先生にすこぉしだけ憧れていたんですけど、榛名主任といい感じだって堂島くんが言うから諦めたんですよぉ」 「……はい?」 二宮は、眉間に皺を寄せて堂島を睨んだ。 「ジョーダンですよ!?ジョーダンに決まってるじゃないですか!!山本主任てば、何本気にしちゃってるんですか!?」 「いや、もちろんジョーダンって分かってるけど……何なの?その慌てよう。逆に怪しいんだけど」 (しまった!) 墓穴を掘ってしまった。榛名の性格をちょっと考えれば、霧咲との関係が透析室はともかく、他の部署にまで知れ渡ってしまったならば確実に退職するだろう。 そうなったとき、榛名大好きナース達から集中砲火を食らうのは間違いなく自分だ。 いや、それは別に食らってもいいのだが、榛名に辞められるのは困る、というか、嫌だ。 自分が変なことを言ったせいで、榛名に辞められてしまったら……… 適度に入っていたアルコールのせいで頭が回らず、堂島は絶体絶命大ピンチだ。

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