極限まで煽られた二宮は、もう堂島の身体のことなど気遣ってやれないとばかりに激しく腰を振った。ギリギリの所まで引き抜き、再び奥まで勢いよく捩じ込む動作を繰り返す。 　二宮自身が出入りする度にぐちゅぐちゅという卑猥な水音と、皮膚のぶつかる音が激しく鳴り響いていた。 　それと、さっき優しく突いていた時よりもだいぶ気持ちよさそうな堂島の嬌声。 「はぁああんっ！！アッ！あっ！そこぉ！」 「ック、ここかよっ！」 　奥を突かれるたびに、前立腺が二宮のカリで擦られるのがたまらないらしい。 　もっとそこを強く擦ってほしくて、堂島は自ら腰を振って二宮を誘導する。 　先程まで自分を押さえ付けていた羞恥心も、自分がエロいことをしているという自覚もとっくに無くなってしまったらしい。 　涎を垂れ流しながら真っ赤な顔をして、ひたすら自分の欲望のままに二宮にオネダリを繰り返しているのだった。 「擦れるときもちぃから、もっと、もっと突いて……！！アッ！」 「っっ……おまえ、さっきから声もセリフもエロすぎんだよ！！」 　もはや２匹の獣のようだった。 　二宮は、無意識にエロい言葉を吐き視覚の暴力まで奮ってくる堂島に煽られ続け、これでもかというほど激しく攻め倒した。 　普通ここまで激しくしたら相手は泣き叫んだ末に気絶しそうなものだが、堂島はむしろ嬉しそうな――甘えた声ばかりをあげる。 「せんぱい、いいっ！きもちいいっ！！もうイク！イク！！」 　――叫び声には変わりないのだが。 「イケよ！おら、イケッ！！俺もお前のナカにブチ撒けるからな！！」 「アン！あ！出してっ！せんぱいのザーメン、おれんナカにたくさん出してぇっ！！」 　そこで二宮は、そういえばゴムを装着するのを忘れていたことを思い出した。 　しかし、もう遅い。 「たっぷり受け取れよっ……！！」 「アッ！アッ！ひぁあーーーっっ！！」 　堂島は再び自分の腹の上に、二宮は堂島の腹の奥で思い切り精を爆発させた。 「っはぁ……」 　二宮は、ずりゅっと自身を堂島から引き抜いたあと――その際に、後孔が自分の形にぽっかりと口を開けて、白い液体が付いて流れてくるのも視覚の暴力だと思った――大きく息を吐きながらその身体の上へドサリと倒れ込んだ。 「ぅぐっ」 　全体重を掛けたため、堂島の喉から変な声――というか、音が漏れたが無視した。そのまま数秒間黙って息を整えて、先に口を開いたのは二宮だった。 「……悪い……中出しした」 「え？ああ……別にいっすよ、妊娠しねーし。二宮先輩、変な病気も持ってないっしょ。それより、重いから早く退いてくださいよ……」 「ああ……」 　返事はしたものの、二宮は堂島の上から退かなかった。ちょっとした嫌がらせだ。 　それにしても、我に返って自分の行動を振り返ると、少し落ち込む。 　中出しなんて今まで一度もしたことなかったのに、そんな最低限のマナーすら守れず本能のままに抱いてしまったなんて。 　聞くところによると、男同士で中出しをすると次の日は腹を壊してしまうらしい。 　――それなら早々に掻き出さなければ。 「おい堂島、お前ちょっと横向きに」 「あの、二宮先輩」 　二宮はやっと堂島の上から退いて、精子を掻き出してやろうとしたのだがその前に堂島に呼ばれた。 「なんだ？」 「ごめんなさい」 「は？」 　何に対しての『ごめんなさい』なのだろう。 　むしろ謝らなければいけないのは、好き勝手しまくった二宮の方なのだが。 「俺、実はちょっとだけ、激しいほうが好きみたいで……」 「知ってる」 （何を今更言ってんだよ。しかも、ちょっとじゃなくてだいぶだろーが） 　二宮はそう突っ込みたかったが、賢者タイムが終わった堂島は二宮と目も合わせられないくらい照れているようなので、敢えて何も言わなかった。 「いや、俺、まじで変態みたいで……」 「………」 　二宮は思わず黙ってしまった。 　そんなことないぞ、とは言いきれないからだ。 「痛い方がより感じるっていうか……いや、痛くても感じるっていうか」 「……おう」 　それってどう違うんだ？と思いながら少し上の空で返事をする。 　そしたら、堂島が怒ったように言った。 「つーか、全部先輩のせいですからね！？なんか俺ばっかり言わせられてますけど！！」 「う」 (……やっぱりか) 　それは、二宮もセックスをしながら薄々感じていたことだった。 「先輩が俺をこんな身体にしたんですから、これからもちゃんと責任取ってくださいよ……」 「おう」 　二宮には『こんな身体にした』覚えは無いのだけど、堂島には元々素質があって、それを前回自分が無理矢理開花させてしまったのだろう。 　そう思うと、少し堂島に申し訳ないような気もするのだが…… 「……俺も同じだよ」 「え？」 「セックスが、こんなに気持ちくて楽しいもんだったなんて今まで知らなかったから」 「た、楽しいって」 　二宮のその言葉に、堂島は恥ずかしさの混じった複雑な顔をした。 　『楽しい』というのは、『堂島の反応が楽しい』という意味であることをなんとなく理解しているからだ。 「ん？」 「……やっぱり酔ってても酔ってなくても、二宮先輩はドSだったんですね。ウイスキー飲んだらそれが表に出てきちゃうだけで」 「いや、あれはお前が煽ったからだ」 「煽ってなんか！」 「全部無意識なら、お前は俺を煽る天才だよ」 「………」 　堂島が黙り込む。 　果たして無意識で煽っていたのかどうか考え込んでいるのだ。 「……無意識かよ」 「だって、激しくして欲しかったから正直に言っただけですし」 「だから、それが煽ってるっつってんだよ！……まあそーゆーわけで、俺だってもう普通のセックスじゃ満足できねぇ身体になっちまったから」 「はあ」 「おまえの方こそ、死ぬまで責任取れよな」 「！？」 　二宮の言葉に、堂島の目が大きく見開かれる。 (死ぬまでって……そんなの、プロポーズみたいじゃん……！？つーか二宮先輩は、俺と死ぬまで一緒にいたいって思ってくれてんだ) 　こんなことを言われたら、今までの自分だったら間違いなく即日に別れている。 　重い恋愛は嫌いだし、責任を取るという言葉もうっとおしいし(他人には投げかけておいて）そこまで誰か一人と一緒にいたいと思ったことが今まで一度もなかったから。 　現在(いま)だって、恋愛においてこれからの人生に関わるような重大なことはちっとも考えていないし――考えたくなかった、というか……。 　だから正直なところ、これから自分達がどうなるかは分からない。 　分からないけれど――これからも二宮と一緒に居ていい、むしろ居ろ、というようなその言葉が堂島には凄く嬉しかった。 「な？」 「……はい」 　二宮は、俯いた堂島の頭をくしゃっと撫でた。 「つーか死ぬまでって、いつまでセックスするつもりなんすか？元気すぎっしょ」 「あ？そりゃヤれるまでずっとだよ」 「俺のケツの穴が死ぬんでヤメテクダサイ」 「お前の方が若い癖に……」