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 今日はウイスキーを飲んでいないのに、少し悪魔が勝っているらしく、優しくする余裕があまりない。  しかし堂島はそんな二宮の遠慮のない腰つきが余程気持ちいいのか、シーツを掴んで上に上に逃げようとする。 「あ! ああ、あ、んあぁッ……!!」 「コラ、逃げんなって」  二宮は堂島の身体を押さえつけて、体重をかけながら何度もナカを激しく抉った。  ――優しくしたいのに、止められない。 「あっ! あンッ、二宮先輩きもちいい、もっとぉ……っ!」 「……っ!」 (煽んなっつってんのに……!!)  そっちがその気ならもう遠慮はしない。二宮のなけなしの理性は簡単に彼方へと吹っ飛び、あとはもう形振り構わず求めるだけだ。 「ああっ! あ、んあぁ……っ!」 「っく……!!」  絶頂が近付いてきて、二宮は目の前のしっとりとした堂島の肌を舐め、噛みつき、キスを落とし、強く抱きしめた。  気持ちも身体も限界まで昂って制御できない。息ができないくらい強く抱きしめて、ねじ込むように愛を囁いた。 「ハァッ、堂島、お前のこと、すげぇ好きだ……っ!」 「ァ、おれも、俺も先輩が好き……ッ! あ、もうイクッ、あ、いく、いくッ、ぅあっ……!!」 「ッく、締めすぎ……俺も出る……ッ!!」  ほぼ二人同時に絶頂に達して、ドサリとベッドの上に倒れ込む。 「はー、はー、はー……」 「はぁ、ン……ッ? せんぱいの、まだ硬くないですか……?」  出したはずなのに、興奮が収まらない。二宮は一旦堂島から自身をズルッと引き抜くと、コンドームを新しいものに付け替えた。 「もう一回、」 「え? ちょ、休憩は……?」 「却下」  今度は正面から、脚を掴んでズブズブと遠慮なく突き挿れていく。 「ひあッ!? ふか、深いぃ……ッ!! そんないきなり、そこだめなとこ、だめ、あ、あ、すぐイっちゃうからぁ!」 「何回でもイけよ、明日立てなかったら、部屋まで送ってってやるから」  二宮は少し楽しそうにそう言いながら、再び腰を激しく動かしていく。口では文句を言いながらも、堂島のソコは二宮の剛直をキュンキュンと受け止めて貪欲に快楽を貪っている。 「んあぁッ! ちょ、今日どんだけスるつもりなんですか……ッ!?」 「……朝まで?」 「無理、それは無理ィィッッ!! 今日一応仕事終わり……ああぁぁ!!」  同じような体格なのに、どうしてこんなにも体力に差があるのか堂島は不思議だったが、そういえば二宮は昔バンドマンだったことを思い出した。他が皆そうとは限らないが――二宮は、持久力が異常に高いのだ。 (甘やかしたいって思ったのは本当だけど、さすがにもう今日は、3回以上は勘弁してほしい……)  何度も何度も繰りかえしイカされ、激しく揺さぶられる視界の中、堂島はそんなことを思った。 * 「――おい、堂島、大丈夫か?」 「ぅ、あ……?」  ぺちぺちと頬を叩かれてゆっくりと目を開けると、目の前に心配そうな恋人の顔があった。 「にのみや、せんぱ……いま、何時っすか……?」 「深夜の2時」 「うわぁ。俺、どんくらい気絶……いや、寝てたっすか?」 「気絶だろ。――だいたい30分くらいか。とりあえず水飲め、喘ぎ過ぎて喉が痛ぇだろ」  なかなか恥ずかしいことをはっきりと言う、ノンデリカシー男・二宮が戻ってきたらしい。堂島は少し身体を起こすと、二宮に甘えてみた。 「……水、先輩が飲ませてくださいよ」 「お? いいぞ」  堂島は普通に、ペットボトルを口に充ててもらうつもりでそう言ったのだが、二宮の行動は違った。――自分が水を口に含むと、そのまま口移しで飲ませてきたのだ。 「ンンッ!? んくッ、ん、ゴクッ……」 「チュパッ、珍しく可愛いおネダリだったな。もう一口飲むか?」 「いや、ちょ、俺は別に……ンン……ッッ」 上手に飲めなくて、口の端から冷たいものが零れ落ちる。  ――こんなこと、今まで誰にもされたことはない。したことがないと言った方がいいのか、口移しで飲ませてもらうなんて……。 「ふっ……ン、コクッ……ぷぁ……」  最初は恥ずかしくてたまらなかったが、何度か繰り返すうちに慣れてきて、キスをするように上手に飲みこめるようになった。 『よくできました』と抱き寄せる手が優しい。 「お前が寝てる間に風呂の用意したから、とりあえず入るぞ。抱きかかえて行こうと思ったけど、さすがに意識のない人間を一人で運ぶのは無理だった」 「いや、そんな無理しないでくださいよ……腰痛めますって」 「むしろお前の腰を痛めまくって悪かったな」 「………」 (全然悪いと思ってなさそう……)  そう思ったが、声には出さずにじろりと睨んだ。  けど、それ以降の二宮はやけに献身的だった。風呂までは堂島を支えて連れていってくれたし、髪も身体も丁寧に洗ってくれた。堂島は今、湯船の中で二宮の脚の間に挟まった状態で温まっている。 「はー……あったか、キモチイイ。普段シャワーばっかだから余計に……」 「ん、無理させてマジで悪かった」 「二宮先輩、本当に反省してるんスかぁ~?」 「してるって。伝わらないか?」 「……伝わってます、ケド」  素直に認めるのは少し恥ずかしかったが、後ろから優しく抱きしめられたらそう言わざるを得ない。堂島は思い切り背中を二宮に凭れて、無言で甘えた。  至福の時間に浸るのも束の間。  今から堂島は、二宮の口からとんでもない発言を聞くことになる。 「……なあ、堂島」 「なんッスかぁ?」 「俺たち、結婚しねぇ?」 「……………」  は?  驚きすぎて、声も出なかった。  ぎぎぎ、とまるで出来の悪いロボットような動きで後ろの二宮を振り返り、顔を見た。 二宮はいつも通り、ポーカーフェイスで平然とした顔をしている。『結婚しないか』と言われた気がしたが、気のせいだった? と思うくらい――。 「返事は?」 「は!? いや待って待って待って!! 何でぇ!?」  急に動いたので、お湯がパシャンと派手に跳ねて顔にかかった。 「何でってお前……」 「いや百歩譲って理由はいいとして、ここラブホの風呂っすよ!? そこでプロポーズって……え!? これ現実!?」 「なんだそのリアクション、ウケる」  二宮は堂島の反応を見てプッと吹き出した。 「逆になんでそんなに落ちついてるんですか!? 俺がおかしいのか!? ──ってかプロポーズするならダイヤの指輪は!? 高層ビルの高級レストランで夜景を見ながらの豪華な食事はぁ!?」 「え、お前そういう典型的なのが良かったのか……? それは悪かったな。指輪はお前の指のサイズとか知らねぇし。自分のサイズも知らねぇけど」 「いや! いやいやいや!! 大事なのはソコじゃない! ソコじゃないですけどぉ!! と、とにかく風呂あがって話をしましょう、すぐに!」 「望むところだ」 「マジ意味わっっかんねぇ!」  堂島は叫ぶように言ったが、まだ一人では歩きづらいので二宮の手を借りながら身体を拭き、置いてあったバスローブに袖を通したのだった。

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