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2-2 ユーリス・フェン・フィアンサーユ

「あの、俺みたいな奴って多いんですか?」  なんだかあまり動じていないユーリスさんを見て、ふと思った。  普通異世界から来ました。なんて言っても信用しないと思うし、信じたとしても戸惑うと思う。けれどこの人はまったくだ。  考えられるとすると、俺みたいな奴が案外多いんじゃないかってこと。  俺の考えを肯定するように、ユーリスさんは平気で頷いた。 「広い世界だから、明確には言えない。だが、二年に一度くらいは世界のどこかであることだ。だから、異界人への支援や保証もしっかりしている。心配するな」 「そうなんですか」  やっと安心出来る要素が出てきた。それにしても、意外と多いな。それだけ事例があれば社会保障も支援も充実してるだろう。それに、珍獣みたいな目で見られなくてすむかも。 「その、異世界人が元の世界に戻ったって事例、知ってますか?」 「いや、聞いた事がない」  そう言って、ユーリスさんは申し訳なさそうな顔をした。この人はかなり優しい。 「だが、就職支援や学術支援、生活支援も充実している。まずはアウンゼール王国の首都に行って、戸籍を作ろう」 「戸籍、作れるんですか?」  俺は驚いた。そんな簡単にできるものなんだ。  ユーリスさんは静かに頷いてくれる。これなら安心だ。戻れなくても、こっちの世界で生きていけそうだ。 「首都か、大都市でなければ戸籍を作る事はできないんだが、可能だ。俺はクエストの帰りで、これからアウンゼール王国の首都へ行く。君が良ければ、一緒に行くか?」 「行きます! ってか、お願いです、連れてってください!」  この人の手を離したら、俺は多分生き残れない。これは予感じゃ無くて確信だ。  温泉から立ち上がって深々と頭を下げると、ユーリスさんは可笑しそうに笑った。

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