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3-1 種族と結婚とあれやこれや

 一難去ってまた一難。すっかり体調も良くなって、むしろ前よりもずっと体が軽くなって上がると、俺はもの凄い事に気づいた。  服がない。  俺の着ていた服はあの植物に破られて布きれだ。下着すらない。  脱衣所で呆然としていると、後からユーリスさんが来て疑問そうにしていたけれど、直ぐに何事か察してくれたんだろう。持っていたウエストポーチから数枚の服を引っ張り出してきた。 「気づかなくて悪かったな。俺のお古だが、適当に着てくれ」 「適当に着てくれって言われても…」  俺とユーリスさんでは体格がかなり違う。俺は170センチそこそこだけれど、ユーリスさんは2メートル近い長身で、体格的にもかなりしっかりだ。貧相な大学生の俺とはそもそもが違い過ぎる。 「サイズは魔法で合わせるから気にしなくていい。下着は未使用がこっちにある」  手渡されたのはトランクスみたいな形だけれど、ウエストは紐で結ぶタイプ。なるほど、ゴムはないらしい。  俺はズルズルのトランクスを履いてみた。ウエストで紐を結んでもかなり厳しい。足元がスースーする。 『ジャスト』  またあの不思議な響きのある声だ。小さな光が俺を包んで、収まった時にはパンツは俺サイズでとってもいい具合になっていた。 「凄い!」 「マコトの世界では魔法もないのか」  感動していると、ユーリスさんは微笑ましい顔で俺を見ている。ちょっとだけ恥ずかしいけれど、純粋に感動だ。なんせ魔法なんて。 「この世界では体格が違い過ぎる種族が共存しているから、服もそれぞれのサイズでは基本作らない。選んで着て、さっきの『ジャスト』という魔法でサイズを合わせるんだ。靴もな」 「小さかった場合は?」 「手間だが、一度『ビッグ』の魔法ででかくしてからだ」  なるほど、便利なんだか手間なんだか。いや、かなり便利だとは思うんだけど。  なんにしてもこれで安心。俺は失礼して白い長ズボンに白い長袖シャツに、赤いベストをもらった。  かなりズルズルでもこの『ジャスト』という魔法をかけてもらうとジャストサイズだ。靴も同じく、ぺったんこの靴を貰った。 「明日の昼には最初の町につく。そうしたら君の服を買おう」 「え? でも俺、お金とか持ってないですよ」 「気にするな。経済に余裕があれば他に奉仕するのは、この世界の美徳だよ」  なんて有り難い世界。そんでもって、この人そんなに余裕があるのか。 「それに、異世界人を最初に見つけた者は保護する責任がある事になっている。これを放棄するのは外道のレッテルが貼られるからな。ちゃんと役所まで連れて行く」 「すみません、何から何まで」 「気にするな」  ニッコリと笑ったユーリスさんの笑顔がまぶしい。俺はこの人に何か返せるかな。 「さて、リビングに戻って食事しながら、もう少しこの世界の話をしよう」  着替えて場所を移した俺は、更なるこの世界の非日常に打ちのめされる事になるのだった。

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