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3-2 種族と結婚とあれやこれや

 まず俺はこの世界の技術力を目の当たりにした。  ユーリスさんとテーブルにつくと、彼は件のウエストポーチから色んな物を出し始めた。  綺麗な皿に並んだ果物と野菜、鶏肉をソテーした料理、塩気のきいたハムとキャベツとトマトを挟み込んだサンドイッチ、瓶に入った酒。  ちょっと待て、どこから出てきたこの大量の物。ってか、服もそこから出してたよな? ウエストポーチはそんな大きさはない。もちろんだ、ウエストに括り付けるタイプのものなんだから。 「あの、そのウエストポーチってどうなってるんですか?」  思わず質問すると、ユーリスさんは手にしていたものを見つめ、それを俺の前に置いた。 「マジックバッグという魔道具だ。これは持ち運びしやすい大きさで、許容量が1トンくらいだ。中に入れた物の重さや容積を無効化し、中に入れた物の時間経過も無効化する」  …すごくね? え? ってことは、これにかなりの物が入って、しかも悪くならないってこと? 「生体はここに入れられないから注意だぞ」 「いや、入れられても困るし」  それにしても魔道具か。凄い世界だな。案外便利。 「日常生活に使う道具は大抵が魔道具だ。中には魔法が使えない者もいるし、使えたとしても属性が合わずに日常生活に支障のある者もいる。だから、結構充実している」 「調理器具や、風呂とか?」 「あぁ、そういう部分だ」  なるほど、それなら日常生活に支障は出なさそうだ。ひとまず安心。  興味津々ではあるが、食事を待たせるわけにもいかない。俺はユーリスさんの対面に座って、頂ますをした。  食事は美味い。というか、慣れた味がする。食材的にも俺の知っている物に近い。 「クエストの残りで、たいした物が無くて悪いな」 「そんな! 美味しいし、量も十分です」 「そうなのか? マコトは小食だな」  そう言いながら、ユーリスさんは食べ物をどんどん胃袋に収めていく。体格がいいし、俺とは根本的に違う人だから、食べる量も凄いのかも。 「あの、俺はサンドイッチと果物だけでお腹いっぱいなんで、お肉どうぞ」 「いいのか?」 「味見で少し食べちゃったんで、それでよければ」  一通り全部に口をつけてしまった。こんなことなら口をつける前に渡せば良かったな。  そんな事などお構いもなく、ユーリスさんは「では頂く」と言ってペロリと食べてしまった。  俺は本当にサンドイッチと果物と野菜で腹が一杯だ。そもそも一つが大きいんだ、なんだか。  何にしても食事が終わるとほっとする。怒濤の一日は、ようやく落ち着きを取り戻していった。 「それにしても、魔道具ですか。これって、どんな人が作ってるんですか?」  色々種類があるようだ。ってか、動力源はなんだろう。構造とか。 「魔道具は基本、人間が作っている。彼らは生活を便利にする道具を作る事に長けている。手先も器用で細やかで、繊細な一族だ」 「人間が作ってるんだ」  ちょっと意外だ。でも、職人魂ってのは日本人の俺にとっては誇らしい。 「動力源はなんですか?」 「魔法石だ。精霊の多い洞窟の奥から採掘する事もあるが、今ではもっぱら妖精が作り出している。妖精は精霊との結びつきが強く、魔法石を作るのが得意なんだ。性能もいいし、何より安定供給ができる」 「妖精がいるの!」  ここは異種族の世界。でも、妖精までいるのか。凄いね、オカルト誌の天国だよ。 「妖精もいるし、ドワーフもいる。ドワーフは武器や防具を作るのに適した一族だ。ただ、少し気難しくて口下手だ。慣れてしまうと気のいい奴らなんだが」 「ドワーフって、背の低いズングリした体型の?」 「あぁ、そうだよ」  妖精大国ここにあり。まてよ、ってことはもしかしてあの種族もいるのか? 「もしかして、エルフもいます?」 「あぁ、いるよ。エルフは森の奥地に住んでいる。あまり町におりてこないな。智の賢者だけあって話すと小難しいが、悪い奴らじゃない。町に少ないのは、騒々しさに慣れないんだそうだ。でも、町で暮らすエルフもいる」 「やっぱり全体的に色素が薄くて、耳が尖ってて、美人が多いですか?」 「あぁ、そんな感じだな。知ってるのか?」 「空想の存在っぽい感じで、小説なんかに出てきます。そういう意味では、竜もそうです」  ゲームは通じそうになかったし、通じたとしてもテレビゲームではなさそうだ。小説っていうなら、伝わるだろう。事実、ユーリスさんは頷いた。 「全く考えが及ばない、というわけでもないのか。それなら受け入れるのも楽かもしれないな」 「いや、流石に色々混乱してますよ」 「そうは見えないが。他に、きいておきたい事はあるか?」  俺は色々考えたが、何が一番衝撃かって言えば、やっぱりあれだろう。

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