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3-4 種族と結婚とあれやこれや

「えっと、この話はまず置いておいて。王都に着いたら、俺はここの住民になれるんですよね?」 「あぁ、その通りだ。ここからなら王都が近い。明日の朝に出発して、昼を過ぎたくらいにはアウンゼール王国の領内に入る。最初の町で馬を借りて、馬で五日程度だな」 「王都で何をすればいいんですか?」 「役所に行って登録してもらえばいい。そこで色々説明を受ける。この登録には俺も付き添えるから、安心していい」  それを聞いてちょっと安心だ。知らない場所で放り出されたら流石に心細い。安堵が伝わったのか、ユーリスさんが笑った。 「住民登録が終わったら、教会に行こう」 「教会!」  えっ、なんで教会? …結婚式じゃないよね? 「教会でスキルを見てもらうんだ。これは役所ではやってもらえない」 「あっ、そういうこと!」  あぁ、驚いた。 「もしかして、結婚の誓いを立てると思ったか?」 「うっ」  意地の悪い顔でユーリスさんは笑う。もう、恥ずかしいったらない。 「安心しろ、君の意志を無視してそんな事はしない。俺は悪人ではないよ」 「それは分かってます。すいません、疑うような態度取って」 「いいさ、そんな事は。マコトは本当に可愛い」  男に「可愛い」と言われる日が来ようとは、思ってもみなかったです。 「何にしても、必要なら道中にしよう。今日は疲れただろうから、ゆっくり休みなさい」 「あっ、でも食器の片付け」 「気にしなくても…」 「あの、俺がやります。俺、家事は一通り出来るんでこのくらい。色々お世話になりっぱなしも心苦しいんで、やらせてください」  あれこれお世話になっていて、何も返せないというのは心苦しい。  俺は進んで使い終わった食器をキッチンに運び、手と水で洗った。近くに何か白い固形物が置いてあって、それを手にして泡立てたら泡だった。石鹸だろうか。  元々の数が少ないから、あっというま。差し出された布巾でそれらを拭くと、ユーリスさんはどんどん無造作にウエストポーチの中に放り込んでいく。うん、便利だな。 「有り難う、助かる。俺も一通りはできるが、つい面倒になって適当にやってしまうんだ。マコトは丁寧で礼儀正しくて、律儀なんだな」 「そんな。受けた恩に何か返したいって思うのと、世話になりっぱなしってのも落ち着かないってだけですよ」  顔が少し熱くなる。でも本当にそれだけなんだ。律儀とか、そんなんじゃない。  それでもユーリスさんは「その心根がまず、真っ直ぐだよ」と言って優しく目元を細め、大きな手で俺の頭を撫でた。 「さて、明日はまた歩く事になる。今日は疲れただろうから、ゆっくり寝よう」 「ベッドは適当に使っていいんですか?」  リビングの奥に木製のベッドが10個くらいある。サイズ的にはセミダブル? 仕切りはない。 「あぁ、使っていい。一応使う前に『クリーン』をかけよう。完全に綺麗になるわけじゃないが、気持ち的にはかなり違う」 「お願いします」  不特定多数が使う布団と考えると、確かに精神的じゃないかも。俺は素直にその申し出に甘えた。  そうして寝転んだ布団は案外柔らかくて変な臭いとかもしなくて、安心して寝られた。体を横たえると不思議と眠気が襲ってきて、俺はそのまま泥のように寝た。

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