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5-1 王都を目指してどこまでも

 料理も出来て準備は万端。俺はユーリスさんと一緒に馬屋へと向かった。話によるとここは馬も売っているが、レンタルもしているらしい。  だが流石異世界、馬は馬でもただの馬ではなかった。  馬と聞いてサラブレッドのようなのを想像していたが、胴も足も首も太い。短い白い毛は艶々で、光の当たり加減でエメラルドグリーンにも見える。  そしてでかい! 俺だって元の世界じゃそこそこ背は高かったのに、鞍の位置が俺の頭のてっぺんって。  そして普通じゃない理由一。この馬の額には金色に光る角が一本ある。  普通じゃない理由二。足元から何か緑色の妖気のようなものを放っている。 「いいユニコがいて良かった」 「ユニコ?」  どうやらそれが、この動物の生物名らしい。  何にしても乗り物らしい。促されるまま二人用の鞍に乗るべく俺は鐙に足を掛けようとした。だが、どうしてもかからない。なぜかって? そもそも足を掛ける輪の位置が俺の腰よりやや上だからだ。  どうしたってこれに乗れる気がしない。そう思って四苦八苦していると、不意に後ろから抱え上げられた。猫を抱き上げるような感じで脇に腕を入れられ体が持ち上がる。 「鐙、かけられるか?」 「え? あぁ、うん」  鐙に足をかけ、鞍に腕を伸ばす。一杯一杯でも届いた。そうして足を踏ん張り腕で持ち上げてようやく、俺は馬の背に乗れた。 「人間にはユニコはでかすぎるからなぁ」  「ははは」と豪快に笑ったのは、この馬屋の主人だ。ごつい体は筋骨隆々で、肌はこんがり小麦色。白い歯を見せて豪快に笑う五十代くらいの人間さんだ。 「まぁ、しかし竜人族は普通の馬には乗れないから、仕方がないんだがな」 「そうなんですか?」 「おうよ。馬が怯えちまって乗せられないんだ」  そういうものなのか。まぁ、人の形をしながらも竜だしな。と、妙に納得した。ちなみにこの馬屋には普通の馬も沢山いた。 「こいつの名はファイってんだ。美人だろ?」 「はい、とても。ファイ、よろしくね」  鞍の前に乗せられたから首とか触りやすい。そっと恐る恐る手を伸ばして触れてみても、ファイはまったく嫌がらなかった。温かい毛並みがとても気持ちよかった。 「では、王都まで連れて行く」 「よろしく頼む」  ふわりと鐙に足をかけて乗ったユーリスさんが手綱を引いて店主に言う。そうしてゆっくりと、ファイは歩き始めた。

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