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6-3 モンスターなんて怖く無い!なんて嘘です
その脇にユーリスさんは立った。
「まったく、人騒がせだ」
まるでお使いを済ませたくらいの様子のユーリスさんをめがけて、俺は駆け出していた。
怖くてたまらなかった。ユーリスさんに怪我がないかが、怖かった。
「もう大丈夫だ、マコト」
「ちが……」
モンスターが怖いんじゃなくて、怪我がないかとか、そういうことが。
「怪我…」
「ん?」
「怪我、してな…」
震えながらだと上手く言えない。それでも、俺の言わんとしている事が分かったのだろう。ユーリスさんは緩く微笑み、俺の体を抱きしめた。
「平気だ、どこも痛くはないよ」
「よか……」
「有り難う、心配してくれて」
優しい瞳が近づいてきて、唇に触れた。俺は驚いたけれど、嫌じゃなかった。
そう、嫌じゃなかった。男同士なんて怖いとか思ってたのに、今は受け入れている。ノンケなのに、熱い舌が心地よいとすら思っている。
「すまない、俺は!」
顔を赤くして、ユーリスさんの手がパッと離れる。俺はそれを見上げて、おかしくて笑った。
「ここ、モンスターが出るんですね」
ユーリスさんの背後で倒れているモンスターを見て、俺は言う。
思い出したのか、ユーリスさんはパチンと指を鳴らした。たったそれだけで、狼のモンスターは灰になってサラサラと消えた。
「え? えぇ?」
「放っておくと血の臭いを嗅いで他のモンスターが寄ってくるかもしれない。かと言ってキャンプに近い場所で火を使うのも危険だからな。灰にした」
「そんな事が…」
魔法、凄いな。
ファイもまた寝転がる。俺とユーリスさんもテントに戻りそのまま朝まで平和に眠った。
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