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10-3 俺って本当にクズじゃないのか!

「でも、経験値を積めばレベルは上がりますし数値も! それに、学力などはまた別ですわ! 異世界人の方への支援も手厚いので、ご利用ください」  お姉さんは俺の前にいくつかのパンフレットのような物を出してくる。学術支援学校の案内、職業支援施設の案内、職人修行案内。 「これらの施設をご利用の場合、授業料の貸し付けが可能です」 「貸し付け?」  ってことは、無料ではない。それは悩みどころだ。 「はい。学校卒業後に就職していただき、そこから返してもらう事になります。あっ、でもその間の寮生活費については無料ですわ」  俺は悩んでしまう。  一応大学までは出たけれど、そこまで勉強が好きというわけでもない。成績もへーぼんぼん。  かといって手先が器用なわけでも、クリエイティブなスキルがあるわけでも、キラリと光るアイディアがあるわけでもない。  やばい、俺本格的に何もできないかも…。 「マコトは料理が上手いだろ? そういう道もあるんじゃないのか?」 「そうなのですか! ありますよ、料理人見習いの募集! これは学校ではなく、住み込みで修業するので国からお金を貸し付ける事はありません」 「あぁ…」  なんかそれも、ちょっとではある。料理は好きだけれど、それを仕事にしてしまうのは違う。趣味が義務になると途端に嫌いになってしまいそうだ。俺ってダメだ。  迷う俺の肩をユーリスさんが叩く。そして、とても優しい目をしてくれた。 「これから教会にも行って、スキルを見てもらおう。身の振りを考えるのはその後でもいいはずだ」 「スキル?」 「スキルとは、秘められた特殊な能力ですわ。肉体の増強や、魔法に関するもの。他にも補助的な魔法だったり、特殊なアイテムの生成に関わるものだったりがあります」  そっか、そういうものもあるのか。もしそんな眠れる才能があるなら、いい仕事があるかもしれない。俺は頷いて、そのスキルに賭ける事にした。 「それでは最後にこちらを腕にはめてください」  お姉さんから手渡されたのは、見た事のある腕輪。金の輪っかに青い宝石のついたものだ。  それを腕にはめるけれど、ぶかぶかだ。落としそうだと思っていると、輪っかは突然キュッと縮んでピッタリはまった。 「動いても絶対に落ちませんし、サイズが変わっても合わせて大きさが変わります。勿論、お風呂に入っても錆びたり壊れたりしませんわ」  いったい、どんな素材で出来ているんだろう…。  何にしても俺はこうしてこの世界の人間として、ようやく一歩を踏み出す事ができた。

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