31 / 73
11-1 スキル「安産」は俺にとって呪いでしかない
ユーリスさんに連れられてきたのは、海外の教会って感じの荘厳な建物だった。これはこれで尻込みだ。入っていいのだろうかという感じだ。
それでも手を引かれて行くと、中は案外人が多い。神の像の前で祈り、そのままの足で椅子に座って雑談している人も多い。案外気軽な寄り合い所のような感じなのかもしれない。
連れられて奥へ行くと、個室がいくつも並ぶ場所にくる。扉の前には明らかにシスターという出で立ちの女の人達がいて、ニコニコと訪れる人を招いていた。
「こんにちは! スキルのチェックですか?」
「え? あの…」
「頼む。彼は異世界人でさっき住民登録を済ませたばかりなんだ」
「まぁ!」
まだ二十代っぽい女の人が驚いた顔をしている。そしてとてもにこやかに俺を部屋の中へと招いてくれた。
ここは俺一人らしく、ユーリスさんは外にいると言ってくれた。
オドオドしながら中に入ると、薄明るい部屋に人の頭くらいありそうな水晶が一つ、その上に透明なガラス板のような物があった。
「まずはお掛け下さい。心配しなくても大丈夫ですよ。リラックスしてください」
「あっ、はい」
俺の緊張を見抜いたシスターさんは柔らかく笑っている。俺もそれに笑い返して、水晶の前にある椅子に腰を下ろした。
「まずはこの水晶に手を触れてください」
「えっと…こう?」
かざしてくださいじゃなくて、触れてくださいだ。
俺は躊躇いながらも水晶の上に手を置いた。
「はい、それで大丈夫ですよ。まずは戦士スキルをチェックしますね」
俺の目の前に降りて来たガラス板の中を、もの凄い勢いで文字が通り過ぎていく。
剣士、魔法剣士、槍使い、弓使い、メイス、ペガサスナイト、ドラゴンスレイヤー、暗殺者、斧戦士…………。
「あれ?」
画面から全ての文字が消えていく。何も残らないけれど…。
「どうやら、戦士スキルはお持ちではないようですね」
「ははは…」
ですよね。だって、ステータスへっぽこ過ぎるし。
「次は魔道スキルを見てみます」
さっきと同じように文字が流れていく。
炎魔道士、水魔道士、風魔道士、土魔道士、光魔道士、闇魔道士、召喚師、支援魔道士…。
「あ………」
やっぱり何も残らない。俺には戦闘に役立つスキルはないらしい。
「まだ大丈夫です! 冒険者ではなくても手に職はつくんですよ。次は職業スキルを見てみましょう」
薬剤師、アイテム生成、獣使い、防具生成、武器生成、導き…………。
「………」
以下同文である。
ともだちにシェアしよう!