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11-5 スキル「安産」は俺にとって呪いでしかない

 教会からフラフラと出てくると、外でユーリスさんが待っていた。心配するような目をして近づいてきてくれたのだ。 「どうだった?」  黒い瞳を見る。優しくて強くて、穏やかな人。この人もまた、子供が出来ずに困っている人だ。  多分だけど、俺は今唯一この人の事は受け入れられる。あの夜の事を思い出しても、嫌悪なんてない。だから時間をかけて慣れてしまえば平気。何より俺はこの人の事がけっこう好きだ。  それでも、違う恐怖がある。俺のスキルを知ったユーリスさんが、途端に俺をそういう風に見るかもしれないってこと。  子を産める道具のように見られたらどうしよう。必死に懇願されて、産んでくれと頼まれて、そういう商売の人のように見られたら俺は辛い。  今が壊れてしまう。俺の価値はこのスキルのみになってしまったらどうしよう。そんなの、気持ちがついていかない。俺だって人間で、道具ではなくて、心があって、甘っちょろいから割り切れなくて。 「マコト?」 「…スキルも、なかったんだ。一生懸命調べてくれたんだけど、ダメで。なんかの間違いじゃないかって、何度か調べ直してももらって。それでも、ダメだったんだ」  隠そう。俺はそう決めた。俺はまだこの世界に馴染めていない。分からない事、怖いことが多すぎる。  俯いた俺の肩を優しく叩いたユーリスさんが、俺の顔を見て笑う。気遣わしい笑みだったけれど、労ってくれるようで安心する。 「そんなに落ち込む事はない。まずは宿に行って休もう。一度に沢山あったから、疲れたんだ」 「はい…」  ごめんなさい。俺は心の中で何度か謝った。  お世話になっている人に、恩を返す事ができる。この人の望むものを与えてあげられる。本来ならば温かくて喜ばしい事じゃないか、子供が出来て家族が増えるなんて。でも、意気地無しだから言えない。  俯いて歩く俺の頭を撫でながら、ユーリスさんは側にいてくれた。

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