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14-3 失恋を経て俺は第二の家族を得た

 目が覚めると外は真っ暗だ。俺は随分寝ていたみたいで驚いてしまう。  起きてお店の方へと向かうと、マーサさんとモリスンさんがお茶をしていた。 「あぁ、起きたのかい?」 「すみません、こんな時間まで」 「構わないよ。お腹は空いているかい?」 「いえ、お昼に沢山頂いたので」  本当にお腹は空いていない。むしろ苦しかったのがようやく落ち着いたくらいだ。 「それならお茶を一緒にどうかな。少し、話もあるし」 「はい」  マーサさんがモリスンさんの隣に移動して、俺は二人に向き合うように座る。お茶が置かれて、飲み込むと落ち着いた。 「マコト、さっきマーサと話していたんだが。君さえよければ、ここで働かないかい?」 「え?」  思わぬ申し出に、俺は目を丸くして二人を見た。マーサさんはニコニコしているし、モリスンさんも穏やかな視線だ。 「うちは夫婦二人の小さな宿だが、これでも食事処としては賑わうんだ。人でが欲しいのが本心だったんだが、いまいちな。君さえよければ、手伝ってくれると助かる」 「あの、ですが俺は力も弱いし、上手く出来るか…」  迷惑を掛けてしまうのではないか。そんな気がして言うと、モリスンさんは首を横に振っている。静かな視線に見られると、諭されているように思えてくる。 「誰だって最初は失敗をするから、気にしなくていい。仕事は少しずつ覚えてくれればいいし、力仕事はない。主に注文を取ったり、料理を運んでもらったりだ。マコトは、好きな事や得意な事はあるかい?」 「…料理が好きです」  唯一俺に出来る事。料理や洗濯、洗い物。俺ができるのは、そういう普通の事だ。 「あら、結構じゃない! 異世界の料理なんて食べたことないもの。ねぇ、今度作ってちょうだい」  マーサさんはパッと表情を明るくして手を打つ。それに、モリスンさんも穏やかな笑みを浮かべて頷いた。 「食事と寝る場所は提供する。服も私のお古だが、使ってくれ。給料は多くはないが、日当で払うよ」 「あの、そんなに沢山! 食事と寝るところだけでも十分なのに」 「マコト、遠慮しすぎるのも良くない。謙遜が過ぎるのも良くない。甘える所は甘えて構わないんだよ。それに、ちゃんと仕事をしてもらう。だから、受けなさい」  そう言われてしまうと俺はなんとも言えない。  でも確かに、仕事をさせてもらえるのは嬉しい。日々の生活を心配しなくてもいいし、少しでもお金が貯まる。  何より、どんな人のところで働くのか分からないよりはこの二人の所で働きたい。  注目されるなか、俺は少し恥ずかしくて赤くなりながらも二人を見て、丁寧に頭を下げた。 「よろしくお願いします」  二人は途端に、とても嬉しそうな顔をした。

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