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18-3 竜人の一族って意外といるんだね

 そこに立っていたのは、とても綺麗な男の人。柔らかな金色の髪をはためかせ、僅かに下がった金の瞳をしている。長身で、ユーリスと同じくらいある。優しそうなその人は俺を見て、にっこりと笑った。 「遅れて申し訳ありません」 「いや、それはいいんだが…」  ユーリスはなんだか心配そうな顔をしている。けれど金色の人は諦めたように笑って、俺の前に来て一礼した。 「初めまして、ユーリスの奥方。私はガロンと申します。こいつとは幼馴染みのようなものです」 「初めまして、マコトといいます」  立ち上がって挨拶しようとしたらガロンさんは押しとどめて「大事な体です」と言ってくれた。 「ガロン、用事は済んだのか?」  心配そうにユーリスは聞いている。それに、ガロンさんは苦笑して首を横に振った。 「断りました」 「…納得してくださったのですか? 陛下は」 「していないでしょうが、私が耐えられません。これ以上感情を置き去りにし、薬で無理矢理に興奮させての交わりなど耐えられません。これで良いのです」  これだけで何の話か、なんとなく察した。つまりはお見合い……というか、子作りの話だったんだ。 「すまない、俺の事があってお前の父も焦っているのだろう」 「止めてください、ユーリス。せっかくのお祝い事を妬むような事はしたくありません。無い物ねだりなのです、どうしても。それに、例えそうして子をもうけても愛せるか分かりません。それではあまりに虚しいでしょう」  そう言って、ガロンさんは寂しく笑う。なんだかとても、疲れたように。 「なんか、難しい事なんだな、跡取り作るのって」 「ロシュ?」 「俺なんてさ、まだまだ落ち着きないって怒られてそんな話ないんだけど。でもさ、マコトは一発でだろ? ランセルは異常として、頑張れば何とかなるんじゃないのか?」 「大変ですよ、とても。私なんて命がけでしたから」  命がけってどんなだろう。そしてそれに耐えた奥さんって凄くないか? この人の執着も凄いな。溺愛の狂愛系かな…。 「マコトは早かったんだな」 「俺はスキルあるから絶対だし」  なんて、親しい感じで言って笑う。瞬間、ユーリスは困った顔をし、他は目をまん丸にした。 「え、何そのスキル。絶対?」 「マコト…」 「え? あっ、あぁぁ!」  秘密なの忘れてた。ってか、ゆるんゆるんだったよ俺! 危機管理できてない! 「もしかして、安産スキルがあるのですか?」  ガロンさんがとても驚いた様子で聞いてくる。それに、俺は恥ずかしながらも頷いた。 「レベルは?」 「…MAXです」 「レベル100って事ですか!」  これにはランセルさんやリュミエールまで驚いたみたいだ。俺はいたたまれない視線の中で小さくなっている。

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