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19-1 スキルがあっても無理なものは無理!
それからは平穏かつ幸せな時間だった。
屋敷のみんなが必要だからって、俺に白いベビーローブをくれた。赤ちゃんが生まれたら着せるヒラヒラしたやつ。この世界では男も女も最初は白いこのタイプらしい。
子供部屋も作ってくれて、ベビーシッターをしてくれるメイドさんとも話をした。
コックさんは俺に栄養つけろって色んな料理を作ってくれて、有り難く食べた。
ユーリスは仕事をしないでずっと側にいてくれた。
これからの事とか、楽しみを話して笑った。お腹の子が初めて腹を蹴っ飛ばしたのに目を輝かせ、少し恥ずかしそうに笑ってくれた顔はお父さんだった。
俺も母になるんだなっていう自覚がゆるゆるとできてきて、微笑ましくて幸せで笑った。
とうとう産まれますって日の夜中、俺は違和感に目が覚めた。なんか、こう……腹の中がキュウゥゥゥと収縮するように痛むんだ。
あれ、痛いな? って思ったらわりと直ぐに治まって、なんだ? って思ったらまた痛む。多分、十五分間隔くらいだ。
ん? あれ? これってもしかして?
俺は「正しい妊婦ライフ」を思いだしていた。この、等間隔で痛いと平気を繰り返すのって、もしかして…。
「ふっ…」
多分だけど、これが陣痛の初期ってやつじゃないのか?
少しずつ痛い時間が増えるんだっけ。このキュウゥゥゥてするのが増えるってことだよね。なんて思っている間に、なんか短くなってないか?
「マコト?」
「うっ…ちょっと待って……」
キュウゥゥゥって、これけっこう辛いかも。腹痛の酷いやつに近くて、ちょっとだけ汗が出る。
「マコト!」
「ごめん、婆さん呼んで…」
蹲ったまま俺が言えば、ユーリスは急いで行ってくれた。その間に俺は小休止の時間。婆さんがきたときには十五分間隔だったのが十分間隔になっていた。
「まだ平気な時間があるんですな?」
「はい」
「それならまだまだ。平気な間に食事でも取って下さいな」
「え…」
えぇ、そんな悠長な感じなのこれ!
痛い痛い! と思っていても、トイレに行きたいのとはまた違う。そして、平気な時間は動ける。
俺は重くなった腹をとにかく抱えて言われるままに食事を取った。本格的に痛むと食べられないからだって。
小さなパンだったり、甘い飲み物だったり。そんなのを摘まんでいるうちに痛くない時間がなくなった。
でも人間少し慣れる。ずっと痛いけれど、わりと食べれたりしゃべれたりする。
側にいるユーリスの方がよほど辛そうだ。オロオロしながらも婆さんに言われて腰をさすってくれる。
これが気持ちよかったりする。痛いのもそうだけど、腰の辺りが重怠く痛むのだ。さすってくれるとこれが緩和される。何より愛情を感じる。
「進んでくるともっと辛くなりますが、まだ力を加えたりしてはなりませんよ。無理に出そうなどすれば体が耐えられませんぞ」
「はひ…」
婆さんは一時間くらいの間隔で俺の所にきて、手をかざして診察してくれる。その間にも甘い小さなパンやお菓子、甘い飲み物をくれる。美味しいんだけど……痛いの増してない?
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