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19-2 スキルがあっても無理なものは無理!
日が完全に登り切り、そろそろお昼かなってくらいになると俺は横を向いたまま動けなくなってきた。
腰が痛い。とにかく痛い! 腹も辛いがこっちも辛い!
「うむうむ、大分産道が開きなさったが、まだまだ狭い」
そんなの、開くの?」
「当然ですよ。ほら、甘い飲み物なら飲めるでしょう。グッと飲みなさい」
「いや、飲みたくなくて…」
気のせいじゃなければ、飲むと痛みが増すんです。
「糖分が大事なんですよ、マコト様。糖分を取ると進みます」
やっぱりかぁぁぁ!
「婆、とても辛そうなんだが…」
ユーリスが泣きそうです。俺は泣いてます。婆さんが鬼に見えています。
俺はハフハフいいながら痛みを逃がしているし、ユーリスは腰をさすって手を握ってます。時々もの凄く痛くなる瞬間があって思い切り力が入ると、ユーリスの手を握りしめてしまって痛そうな顔をするんです。俺のどこにこんな力が…。
「こんなもんではありませんよ。ほら、痛みを短くするためにも糖分を取ってくださいな。陣痛が進みません」
「あうぅぅぅ」
そう言われると覚悟しないと。痛いのは当然いやだが、これが長く続くのも嫌。
涙目になりながら甘い飲み物を飲み込む。すると少ししてまた、ギュウゥゥゥゥゥゥと中が絞られるように痛んで冷や汗が出てくる。
「ふぅぅ!」
「ほら、ちゃんと進んでおりますぞ」
もぞもぞしつつそうしていると、中が少し動いた。重い塊が少し降りてくるような。
「んぅぅぅ!」
直後響いた痛みに我慢出来ずに声が出てしまう。
「もう少し開いて貰わないと…」
もう少しっていつなんだよぉ! 俺スキル頑張れよぉ!! 仕事しろ!!
お茶の時間くらいになるともうダメだった。断続的に襲う痛みは腰を伝って背骨にまで響いてくる。体を小さくしたくても無理。涙目になってひたすら耐える。
婆さんは鬼婆で、そんな俺の口の中に甘いお菓子を放り込んで飲み物を流し込む。「体力勝負ですぞ」なんて言うけれど知ったことか! 死ぬぅぅぅぅぅ。
その時、またググッと降りて来たと思ったら突然腹の中で「パン!」と何かが破裂した。腹の中で水風船が割れた感じだ。
途端に意図してないのに漏らしたみたいに股の間がずぶ濡れになる。そしてこれまでに感じた事のない腹痛に絶叫した。
「破水しましたな。どれどれ」
「いっ! ひいぃぃぃぃ!」
ガクガクと震えながら腹に強制的に力が入って痛みで飛びそうになる。力が入る度にお漏らしだ。腹に力が入る方が少し痛みが引く。けれど婆さんは無茶な事を言い始めた。
「まだ完全に開いておりません! これ、腹に力を入れちゃいかん!」
「無理だってぇ!」
死ぬ、死ぬ、死ぬ!
ガクガク震えてどうしようもない。腹に力が強制的に入るんだ、どうするんだよぉ!
「このまま腹の水が全部こぼれたら後々苦しむのはマコト様ですぞ! ほら、息を吐いて上手く逃がしなされ!」
「無茶言わないで!」
横向きのまま俺は必死に息を吐いた。涙止まんないし震え止まんないし痛いの終わんないし!
「息を少しずつ吐くんですぞ! ほら、少しずつ少しずつ。痛い時に息を止めちゃいけません!」
「痛いと息止まるの!」
息止まったまま再開しないかもしれないっての。
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